第7話

 話すこともないのに毎日毎日電話をかけた。話が盛り上がったところで理由をつけて電話を切り、を毎日続けた一週間後、丸二日ぐらい連絡を取らない期間を作る。そしてまた毎日電話をして会社の話も聞いてあげる。長電話にも付き合ってあげて、返事は大げさなくらいの反応で。とことん絢香を私に依存させた。


『やなせ?なんで返事くれないの?』

 絢香からメッセージが来た。もうこれで絢香は私の思い通りだ。

『柳瀬!二日も連絡ないから心配です、返事して!』

 いい感じだ。既読つけずに二日放置。明日朝一で返事してあげよう。

 私の計画はそんな感じで始まった。


『ごめんごめん!友達と遊びに行ってたから返事できなかったー。』

 大嘘だ。私に今友達と呼べる人はいない。ただ、二日放置してただけだ。

 すぐにつく既読。何かが返ってくる前にこちらから通話をかける。

「あー、もしもし絢香?おはよー。」

『柳瀬!!!!もう!心配したんだから!』

 電話に出てすぐ大きな声で私を呼ぶ。心配も何も、何か行動することなんてなくただスマホの前で嫌われたのかな?とか考えてただけでしょ。

「ごめんごめん」

『あのね、今日の夜なんだけどね、ご飯食べにいかない?』

「急だね?いいけどなんで?」

『会いたいからじゃダメ?』

「何恋人みたいなこと言ってんの?ウケる。」

 こんなに思惑通りに......!まさに掌の上じゃないか。

『笑わないで!会いたいの!』

「わかったから。ごめん今友達待たせてるからまた後で!夕方に会社の前で待ってるねー。」

『またどこか行くの?』

「そ!じゃ!」

 一方的に電話を切る。追ってすぐに絢香からメッセージが届く。

『仕事行ってくるね。』

 もはやルーティンになってしまっている仕事行きます報告にあきれて適当なスタンプで返す。

 もちろん待たせている友達なんかいないから、スマホをその辺に放り投げて読みかけの心理学の本を手に取る。今日の夜からはまたしばらく毎日絢香の相手をしよう。

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