第3話 ひそやかに光って

初めてのステージが終わってから数日。


SNSを開くたびに、世界中からコメントが飛んでくる。


「次はいつ歌うの?」


「君の声に救われた」


「She’s different, but shining!」


眩しいくらいの言葉が並んでいるのに、私は胸の奥で落ち着かない気持ちを抱えていた。



理由はひとつ。


彼の存在だ。


同じクラスの男子で、歌も踊りも群を抜いて上手い。


けれど、彼はいつもどこか一歩引いているような態度をとる。


笑顔を見せても本気じゃない、誰かと話していても距離を置いている。


その瞳の奥に、何を隠しているのか分からない。


私が少しずつ注目を浴びるようになってから、彼の言葉はさらに意味深になった。


「人気者だな。…でも、光には影が寄ってくる」


「え?」


「気をつけろ。人はすぐ噂を作るから」


ただの忠告なのか、それとも。

彼が何を思っているのか、分からなくて心臓が強く脈打った。


その夜、SNSで小さなざわめきが起きた。


「月音、男子と二人きりで練習してたって」


「恋愛禁止なのに?」


まだ大きくは広がっていないけれど、確かに火種はそこにあった。


私は画面を閉じ、胸を押さえた。


誰にも言えないけれど、私は彼のことを意識してしまっている。


だからこそ、この噂は痛かった。



次の日、留学生のリリィが明るく声をかけてきた。


「大丈夫!あなたのファンは信じてくれるよ。


それに…彼、普通じゃないでしょ?」


「普通じゃない?」


「うん。あの人、何か隠してる。けど――あなたが気づかせるんじゃない?」


リリィの言葉に心が揺れる。


彼のミステリアスな雰囲気、隠された何か。


それが気になって仕方がなかった。



数日後、学園から新しい試練が発表された。



     **「デュオ・パフォーマンス大会」**

二人一組でステージに立ち、観客とSNSで投票が行われるという。


そして、私のパートナーに選ばれたのは――彼だった。


「…俺と組むの、嫌か?」


「い、嫌じゃないよ!」


「ならいい。…お前となら、面白いものが見せられる」


その言葉の奥に何が隠されているのか。

期待か、挑戦か、それとも秘密の真実か。



光と影。

ふたつが重なったとき、どんな舞台が生まれるのだろう。


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