第7話

朝日の薄い帯が洞窟の入口から差し込み、その冷たい光がこれから行われようとする血と鉄の饗宴とは不釣り合いに私たちを撫でた。湿った石壁の匂い、鎧と武具が擦れる金属音、そして遠くからただよう乾いた硝煙の香り。それらが肺の奥に積もるたびに、私は吐き気とともに心の奥の何かが震えるのを感じた。人を殺すという現実と、自分が死ぬかもしれないという恐怖が同時に波打ち、しかも集団に紛れたときにだけ得られる高揚がそれらを混濁させる。遠方で狼煙が一つ、二つと上がる。作戦開始の合図だ。私は合図を確かめると、騎士たちとともにじめついた通路へ滑り込み、爪先立ちで暗がりを進んだ。


やがて視界が開け、学校の教室ほどもある広間に躍り出ると、そこには嘲笑と嗚咽が混じった生々しい音が充満していた。衣擦れの音、低い鼻笑い、短剣が床に突き刺さる鈍い音。楕円に盛り上がった腹を抱えた太った男が女の衣を剥ごうと身を屈め、周囲の悪党たちは嘲るように輪を作っていた。その光景はあまりにも露悪的で、刹那、私の身体の奥で何かが弾けた。理性とは別のところから湧き上がる衝動——ただ目の前の悪漢どもを絶たねばならないという、静かな必然性のようなものだ。


動きは速く、正確だった。刃が閃き、短い叫びが石壁に反響する。血が跳ね、赤い斑点が石床に散っていく。私の周りで騎士たちが整然と暴力を行使する様は、凄まじく冷徹でさえあった。決着は瞬く間に訪れ、盗賊たちの倒れた体と転がる首が非情に現実を告げた。私はその間にも手が冷たく震えるのを止められず、瞳の奥で光は揺れていた。


先ほどまで恐怖に歪んでいた女が、震える瞳で私を見上げる。彼女の目に映ったものは救済の光だけではない。救われた者の感謝、恐怖、その眼差しに混ざる疑念——そして私自身の変貌を映した鏡だった。ああ、作戦は成功したのだろう。だが同時に、胸の奥で冷たい断絶が広がる。今ここで流した血と、犯されたかもしれない屈辱の現場を踏み越えたその瞬間から、私を取り巻く世界の扱いはすでに変わってしまったのだ。令嬢としての柔らかな称号や、無邪気に守られる特権はもう戻らない。朝の光は変わらず静かに差し込んでいるが、私の影は以前よりも濃く、輪郭を変えていた。外に戻れば人々は勝利を祝うかもしれない。だが私の内側では何かが失われ、得られたものと差し引きされて新しい自分が立ち上がろうとしているのを感じた。血の匂いは消えず、私の喉には戦いの記憶が喉の奥で固まっていた。未来の私がそれをどう呼ぶかはまだ分からない。ただ一つ確かなのは、今日という朝が私を変え、これから先に戻る場所はもう存在しないということだった。







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