第4話

目を開けて数日。ようやく、ぼんやりとだが自分の置かれた立場を整理できるようになった。


私は――シャルル・フォン・エインズワース。

この王国において、最も力ある名門のひとつに数えられるエインズワース侯爵家の三女である。


父はガルド=ヴァン・エインズワース。幾多の戦場を勝ち抜き「英雄公爵」と呼ばれる豪傑。家にいる時も雷鳴のような声を張り上げる、まさに豪放磊落そのものの人物だ。

母はエリシア。白銀の髪を持ち、氷の魔術において無双と謳われた才媛。だが家庭では柔らかな眼差しを向け、私を抱き上げるその手は不思議なほど優しい。


そして、四人の兄姉がいる。

長兄レオハルトは十七歳。父の跡を継ぐにふさわしい剣士であり、すでに軍に籍を置いている。

次兄カイルは十五歳。剣より書を愛する学究肌で、知略においてはすでに大人顔負けだ。

長姉セレナは十二歳。母の才を受け継ぎ、魔術の修行に励んでいる。

次姉ミリアは十歳。天真爛漫で無邪気、家中を明るくする存在だ。


――かくして私は、武と魔に秀でた家柄に生まれ、しかも兄姉たちもそれぞれの分野で際立った才能を持っていることを知った。


だが、ここに放り込まれたのはただの赤子ではない。三十年社畜として働き詰め、過労死した前世の記憶を背負う、奇妙な転生者である私だ。


これから成長し、エインズワース家の一員としてどんな役割を果たすことになるのか――

今はまだ揺りかごの中で考えるばかりだが、その未来が平凡ではないことだけは確かだろう。

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