第8話:At the Zoo
ひよりたちは入念に「Zooプロジェクト」壊滅作戦の手立てを練っていた。
しかし相手は国家権力を持つ公安だ。
いくらマスターやひよりが優れていても、正面から挑むのはあまりに無謀だった。
【ひより】「悔しいけど、いくら腕があっても人数と国家権力に直接挑むのは無謀すぎるわね…」
ひよりがそう漏らすと、マスターは静かに答えた。
【マスター】「いや、奴らが真実を知る俺たちを消しにかかるのは目に見えてる。そう考えるとここで迎え撃つのが得策だろう」
彼らがそう話し合っているのを聞いていたかのように、店のドアが開き、さおりが戻ってきた。
しかし、彼女の顔には以前の優しさや温かさはなく、冷たい笑みを浮かべていた。
【さおり】「さすがマスターね。そこまで分かってるなら、もう遠慮は要らないわね!」
さおりの言葉に、マスターは悲痛な面持ちで問いかける。
【マスター】「そこまでして君は何がしたかったんだ…。俺はともかく、ひよりまで利用したのは何故だ?」
クローンさおりは、その質問に悪びれることなく、すべてを語り始めた。
【さおり】「Zooプロジェクトを推進するには、まず佐伯悠一の持つナノマシン技術が必要だった。それを奪うためにあなたたちを利用したの。そしてあなたたちは予想通り、佐伯たちからその技術を手に入れてくれた。そして私はこの世に甦ったのよ。いえ、生まれ変わったというのが正しいわね」
彼女は、自分自身の起源を淡々と語る。
【さおり】「最初は見かけだけの模倣だったから、なかなかあなたたちの前に姿を現すことができなかったけど、徐々にナノマシンのクローン転用も成功し、私は完璧な『さおり』になったの」
【さおり】「さらに、ひよりやかぐやを実験台にして、技術も確立した今、もうあなたたちは完全に用無しなのよ」
そのあまりに非道な言葉に、全員が言葉を失った。
愛は恐怖で身を震わせ、セシリアは怒りに顔を歪める。
そしてクローンさおりは、まずマスターを殺そうとする。
ひよりもマスターも、その戦闘能力で攻撃はかわすことができた。
しかし、愛するさおりの姿をした相手を倒すことはできずにいた。
【さおり】「それがあなたたちの弱点なのよ。この姿の最大の強さはそこよ」
クローンさおりは、マスターを押さえ込む。
マスターはさおりの顔を愛おしむように、そして嘆くように見つめるだけだった。
クローンさおりはピックのようなものでマスターの額を突こうとしていた。
しかし、間一髪でひよりがさおりを振り払う。
【さおり】「何よ、ひより!あなたはこの男を仇と信じてたのよね。良く飼い慣らされたものね」
クローンさおりは、ひよりを挑発する。
【ひより】「お母さん…いや、あなたには記憶はあっても『心の目』がないわ!マスターはあなたすら救おうとする、そんな人なのよ」
ひよりの言葉に、クローンさおりは一瞬、動きを止めた。
その隙を見て背後からセシリアが、彼女に何かを注射する。
【セシリア】「さあ、これで記憶は全て回収されるわ。あなたが抜け殻になる番よ」
セシリアがそう告げると、クローンさおりは意識を失い、そしてまるで産まれたばかりの子供のようにあどけない微笑みを浮かべて眠り続けた。
しかし、ひよりたちは知っていた。
これは終わりではなく、新しい物語の始まりに過ぎないことを。
(第8話 終)
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