第7話:Voices of Old People


旧喫茶店「モーニング・グローリー」。

そこは、かつてマスターとひよりが、初めて出会った場所だった。


その古い店の奥に、マスターとヘギョンは身を潜めていた。

彼らの手元には、公安からひそかに手に入れた資料がうず高く積まれている。


【ヘギョン】「マスター、これで結論は出ましたね」


ヘギョンが、静かにマスターに語りかける。


コソ・コグニートのナノマシン技術を応用したクローン生成。

自分たちに都合の悪い人間のクローンを生成し、元の人間を抹殺することで、思想をコントロールすることが可能な技術…。

それこそが、一連の事件の根底にある「Zooプロジェクト」の正体だった。


そして、このナノマシンをひよりの体内に注入できる立場にあった人間は、ただ一人。


【マスター】「……さおりしかいない」


マスターの口から、重い言葉がこぼれ落ちる。


ひよりを『双子』にしたのは、他でもない、ひよりの母親。

だが、なぜ?

なぜ、愛する娘を実験台にしたのか?


マスターとヘギョンは、資料をさらに読み進める。

すると、もう一つの恐るべき真実が浮かび上がってきた。


【マスター】「さおりが、自ら裏切ったのか……それとも、さおり自身も、クローンに置き換えられてしまったのか……」


その謎を解くために、ひよりの元に集結する時が来た。

マスターとヘギョン、そしてセシリア、愛たち。

彼らは、それぞれの想いを胸に、ひよりの元へと向かった。


ひよりは、愛と錦と共に、ある倉庫に身を潜めていた。

そこに現れたのは、マスターとヘギョンだった。

ひよりは、無事なマスターの姿に、安堵の涙を流した。


【ひより】「マスター!無事だったんだね!」


マスターは、ひよりを優しく抱きしめた。

しかし、その瞳には、安堵とは違う、悲しみが宿っていた。


【マスター】「ひより……これから、もっと辛い現実が待っている。それでも、俺を信じてくれるか?」


マスターの言葉に、ひよりは頷いた。

何度も疑心暗鬼や裏切りを経験してきたが、このマスターの言葉だけは信じられた。


マスターは、かぐやを作る上で、ひよりの体内にナノマシンを仕込めるのは、さおりしかいなかったことを告げる。

ひよりは、すでにそのことに気づき始めていた。

彼女の心の中には、母が自分を裏切ったのではないかという、深い疑念が渦巻いていたのだ。


ヘギョンが、辛い真実を続ける。


【ヘギョン】「ひよりさん、おそらく、あなたのお母さんは、すでにクローンに置き換えられている」


【ひより】「……え?」


【ヘギョン】「本来のさおりさんは、おそらくもう他界しているでしょう。そして、このクローンさおりこそが、クローン生成計画、Zooプロジェクトの真の黒幕です」


ヘギョンの言葉に、ひよりの心は悲鳴を上げた。


かぐやがクローンであることは受け入れられた。

しかし、母親が、自分が愛した母親が、クローンだなんて。

そして、そのクローンが、自分を、家族を巻き込んだ一連の事件の黒幕だった…。


ひよりは、あまりの衝撃に、その場に崩れ落ちた。

何度も裏切られてきたが、母の裏切りは、あまりにも重すぎた。


【マスター】「ひより……」


マスターは、ひよりの肩をそっと抱き、朴訥と呟いた。


【マスター】「ひより、俺たちが過ごしてきた日々だけは、嘘じゃない」


【マスター】「仮に三人で過ごしたさおりがクローンだったとしても、彼女の中には、さおりの完全な記憶が移植されているし、そしてその後の日々の記憶は、彼女そのもののはずなんだ。それだけは、信じて良いと思う」


マスターの言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようだった。

彼もまた、さおりがクローンであるという事実を、まだ受け入れきれていなかった。

しかし、彼は、ひよりを、そして自分自身を信じようと、必死だった。


ひよりは、マスターの言葉に、かすかに頷いた。


【ひより】「うん……私はマスターを信じる」


いよいよ、Zooプロジェクトを壊滅させる、運命の日が近づいていた。


(第7話 終)

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