第5話:Fakin' It


セシリアの薬局は、今のひよりにとって安息の地だった。


さらにセシリアは何やら新たな開発に追われているようではあったが、それもひよりや愛、仲間を救うためのものであり、そのこともひよりに信頼を与えてくれた。


そんな多忙な中でも、マスターとさおりが姿を消し、かぐやと宵藍に裏切られ、孤独と絶望の淵に立たされたひよりの心を、セシリアは優しく包み込んだ。


【セシリア】「彼は瑠輝也よ。こういうのは科学も大切だけど、やっぱり『心の目』で見ることが大切よ」


セシリアは、ひより宛に届いた明星瑠輝也からのメッセージを見ながら、いつもの口癖でそう諭した。


ひよりは、まだ半信半疑だったが、瑠輝也が自分を助けるために、もう一人の自分を裏切らなければならないという言葉の真意を確かめるため、彼を信じてみることにした。


それから瑠輝也は警護も含めて、薬局に頻繁に訪れるようになる。

彼はひよりに、マスターと以前から連絡を取り合っていたこと、そしてマスターがひよりを守るために、自分をナイトとして指名したことを話した。


【瑠輝也】「僕は、君を守るために、そしてかぐやさんを救うためにここにいる。だから、どうか僕を信じてほしい」


瑠輝也の言葉は、ひよりの心に静かに染み込んでいった。


こうして少しずつではあるが、ひよりと瑠輝也の関係が深まる中、かぐやは進捗の無さに苛立ちを隠しきれずにいた。


それは明星とひよりとの関係への嫉妬もあるのだろう。

計画を早く進めるため、かぐやはある装置を宵藍から奪うことを決意する。


それはナノマシンの制御装置だった。

この装置はナノマシンを体内に送ることで記憶や体内の情報を回収し、クローンを作り出すための、いわばクローン生成機なのだ。


これを使い、かぐやは自らの手で、自分とひよりとの完全統合を企てる。

そう、かぐやはひよりの記憶と生体情報をナノマシンによりコピーしたクローン体だったのだ。


しかしこれまでに取得できたのは、まだ一部の情報のみで、完全なるクローンとはなっていなかった。


【かぐや】「今度こそ、ひよりから全てを奪ってみせる!」


かぐやはそう決意し、ナノマシン制御装置を隠し持ち、再びひよりの背後を狙う。

今度は前回と同じ轍は踏まない。

ある人物から聞き出した情報に従って、ひよりにメッセージを送る。


『遠藤愛のことが心配なら、あなた一人でクラブまで来なさい!さもないと愛の命は保証しない』


このメッセージに、ひよりの心は以前の闘志を蘇らせていた。

そう、彼女は本来、孤独な戦士だったのだから。


しかし、それを知った瑠輝也はひよりを心配して、自分も着いていくと言う。


【瑠輝也】「君が百戦錬磨なのは十分承知しているよ。それでも近くで見守っていたいんだ。良いかな?」


【ひより】「ええ、足手纏いにならなければ別に良いわよ」


【瑠輝也】「それじゃあ決まりだ。お供しますよ、お姫様!」


二人はクラブに到着すると、まずはひよりが屋根裏に潜入し、室内に愛がいないことを確認した。


【ひより】「やっぱり私をおびき寄せるためのブラフだったわね…」


代わりに室内は、多くの公安の人間で溢れていた。


【ひより】「これも予想通りね。まずは一人ずつ片付けてあげますか!」


いくらクローンを生み出すことはできても、鍛えた技はやはり鍛錬でしか生み出すことはできない。

ひよりはあっけなく公安の人間たちを制圧し、予定通り瑠輝也の出番はなかった。


残るのはかぐや一人だけで、到底勝ち目はなかった。

不意をついたつもりのかぐやの計画は今回もあっけなくひよりに制圧された。


しかしここで明星が豹変する。

先ほどまでひよりの味方をしてくれていた瑠輝也が宵藍へと変貌していく…。


今度はひよりにもハッキリとその違いを認識できた。

宵藍はかぐやを連れて逃亡した。


しかし、かぐやはまだ明星の二面性を理解できず、ひよりの味方をしたことに失望と嫉妬を強く感じたままだった。


またしても一人残されたひよりだったが、次第に今回の出来事の全貌が見えてきたような気がしていた。

しかし、それはまだ恐ろしい計画の一部でしかなかったことは、ひよりには、まだ知る由もない。


(第5話 終)

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