第4話:Mrs. Robinson
マスターとさおりが姿を消してから、ひよりの心には深い孤独が巣食っていた。
そんなひよりのそばに、明星瑠輝也が寄り添ってくれた。
彼が隣にいるだけで、ひよりは心が安らぎ、再び笑顔を取り戻していった。
ひよりは、彼の言っていた「ナイト」という言葉を信じ、彼にすべてを話すようになっていった。
しかし、ひよりはまだ明星の言っていたことを完全に信用したわけではない。
二人の明星は双子の別人なのか、それとも二重人格なのか。
かぐやが姉妹であるということも「ひよりはもうすぐいなくなる」と言った言葉からすべてが嘘に思えていた。
そんな時、森山刑事から続報が入る。
【森山刑事】「マスターとさおりさんが、共に姿を消したらしい」
どうやらヘギョンの手引きで公安の手を逃れたようなのだが、彼らからの連絡も一切なく、ひよりはこれまで以上に孤独を強く感じていた。
【ひより】「どうして……どうして誰も私に何も言ってくれないの……」
ひよりは、大切な人たちが何も告げずに自分を置いていくことに、強い怒りすらおぼえていた。
ある日、ひよりは買い出しで喫茶店を離れた。
裏路地に入った瞬間、覆面を被った二人組が襲いかかる。
【ひより】「ふん、それで私が倒せるとでも?」
いくら消沈しているとはいえ、そこは百戦錬磨のひより。
見事に攻撃をかわし、まずは小柄な相手のみぞおちに一撃を加えた。
相手はその場に倒れ込むが、背後からもう一人がナイフで近付いて来る。
エコバッグが切り裂かれ、中からコーヒー豆が溢れ落ちる。
【ひより】「ああもう!もったいないなぁ」
そう呟いたや否や、ナイフはエコバッグに巻き取られ、ひよりの手に移る。
そしてそのナイフで二人の覆面がキレイさっぱり破り取られた。
そこに現れたのは、かぐやと明星宵藍だった。
【ひより】「やっぱりあなたたちは私を狙ってただけなのね」
ひよりが冷たい声で問いかけると、かぐやは悪ぶれるでもなく、あっさり認める。
【かぐや】「そうよ!あなたは私を補うためのただの部品でしかないのよ!」
かぐやがそう切り出すと同時に、周囲は黒服の男たちで埋め尽くされていた。
彼らにはひよりも見覚えがあった。
そう、公安の人間たちだ。
ひよりは、かぐやと宵藍を人質にしながら表通りに進む。
そして目立った行動を嫌った公安がためらう隙に、あっという間にひよりだけが姿を消していた。
ひよりはこういう時のために逃げ込むルートを確保してあった。
それはマスターの教えでもあり、自らが生き延びるための知恵でもあった。
ただこうなっては喫茶店はもう危険過ぎるため、ひよりはセシリアの薬局に身を寄せることにした。
セシリアは快く受け入れてくれ、彼女がコソ・コグニートからの回復に、その元凶でもあるナノマシンそのものを応用しようとしていることを明かした。
彼女はナノマシンが単なる脳や身体能力の活性化だけでなく、新たな用途がすでに開発されているという真実にも辿り着きつつあった。
それこそがかぐやや明星の存在そのものであり、それを裏で操る、真の裏切り者の正体に迫ろうとしていたが、それはまだひよりには告げずにいた。
ひよりはセシリアの薬局で、身も心も休めることができた。
しかし、その夜、目を覚ますと、彼女の携帯電話に、謎のメッセージが届いていた。
【瑠輝也】「君を助けるために、僕は僕を裏切らなければならない」
それは、明星瑠輝也からのメッセージだった。
(第4話 終)
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