第6話

刑事はさらに一歩踏み込み、声を張り上げた。

「しかも……毛の処理済みだ!!」


「ぎゃああああああああああ!!」

若い女性が耳まで真っ赤にして立ち上がる。

学生は口をパクパクさせて硬直し、サラリーマンは完全に目をそらした。

老夫婦は小声でつぶやく。

「いやぁ…最近の若い子は…」


女性は顔を歪め、声を張った。

「ちょ、ちょっと!! なんでアンタがそんなこと知ってんの?!💢💢」


刑事は冷や汗をかきながらも、必死に体裁を保つ。

「……痕跡を調べれば分かるんです」


私は吊り革を握りしめ、心の中でツッコんだ。

――分かるかい!!!


小さな車両の中で、混乱の波は静かに、しかし確実に広がっていった。


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