第8話 成果と告白
数か月後、俊介が任された案件は無事に完了した。
プレゼンの場で上司に「よくやった」と声をかけられ、同僚たちからも拍手が起こった。
その瞬間、胸の奥に広がった温かさは、言葉にできないほど大きなものだった。
――かつては考えもしなかった。「自分が認められる日」が本当に来たのだと。
その夜の打ち上げの席でも、仲間たちから「頼りになる」「よく頑張った」と声をかけられた。
酔いではなく、心の奥にじんわりと広がる充実感に、俊介は何度もグラスを持つ手を止めてしまった。
店を出ると、酔いの残る体に夜風がひんやりと頬を撫でた。
人波の中で自然と歩幅が合い、気がつけば彩と二人きりになっていた。
「今日の佐伯さん、すごく堂々としてましたね」
「そうかな……正直、緊張で手が震えてたけど」
「でも、それを隠して最後までやりきるのが、本当の強さなんだと思います」
街灯に照らされた横顔を見ながら、俊介は深く息を吸った。
「俺、変わりたいってずっと思ってた。でも石川さんがいなくなって……やっとその意味が分かった気がする。
逃げないで前を向くこと、それを続けること。……彩さんのおかげでもあるんだ」
言葉を吐き出した瞬間、胸が熱くなった。
これまで心にしまい込み、声にできなかった想いが、ようやく形になったのだ。
彩は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかな笑みを返した。
「じゃあ、これからも隣で応援させてくださいね」
その言葉は告白に等しかった。
俊介は胸の鼓動を抑えられず、ただ力強くうなずいた。
――止まっていた時間は、もう二度と止めない。
その夜、初めて俊介は、自分の未来が誰かと重なって描かれていく感覚を、確かに覚えたのだった。
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