【差別】無知は差別を生み、差別は悪を生む
晋子(しんこ)@思想家・哲学者
差別の快感に溺れるか?知の喜びを選ぶか?
人間は差別が趣味である。こう言うと極端に聞こえるかもしれない。しかし冷静に考えてみれば、差別には人間の快楽欲求が潜んでいる。自分より弱い者や少数派を見下すことで、「自分は優れている」と錯覚する。その優越感は、まるで娯楽のように繰り返され、時に習慣となる。だから差別はただの社会的問題ではなく、人間の心の深いところに潜む「趣味」に似た性質を持つのだ。
だが、趣味という言葉が明るく聞こえるのなら、ここで強調しておきたい。それは健全な趣味ではなく、他者を傷つけなければ成立しない破壊的な嗜好だ。人間が文明を築く過程で、差別を「楽しんではならないもの」として抑え込み、教育や法律で制御し続けてきたのはそのためである。差別の誘惑は甘美だが、甘美だからこそ毒でもあるのだ。
では、なぜ人は差別の毒に手を伸ばすのか。それは「無知」ゆえである。人は知らないものに対して恐怖や不安を抱く。そして理解できないものを単純化し、「敵」や「劣等」として片付ける。無知は常に短絡を生み、短絡は差別という形で表れる。逆に言えば、知識を深めれば深めるほど、世界を複雑なままに理解できるようになり、他者への偏見は減少する。だから勉強は単なる自己実現のためではなく、差別を抑止するための最低限の義務でもあるのだ。
勉強しない人は、無知のまま世界に対峙する。そのとき彼らは「理解できないものを排除する」という安易な道に逃げ込みやすい。つまり「バカ」であることは、差別に快感を求めやすい状態を意味する。バカは差別で自分を慰める。そして差別を繰り返すことで社会を壊し、他者を傷つける。だから「バカであること」は単なる知識の不足ではなく、倫理的な罪に等しいのだ。
この論理はカントの思想にも通じる。カントは「啓蒙とは、人間が自らの未成年状態から抜け出すことだ」と言った。理性を使わず、ただ周囲の偏見や慣習に流されることは、人間の尊厳を放棄する行為だ。学ばない者は「永遠の子ども」として生きることになり、その未熟さが差別や偏見を正当化する土壌となる。つまり勉強を拒むことは、自ら進んで差別者になろうとすることに等しい。
もちろん、ここで注意すべき点もある。もし「バカは悪である」と断言しすぎれば、学びにまだ到達していない人をも排除する危険があるからだ。人間は本来、学び続ける存在であり、最初から賢い者などいない。だから正しくはこう言うべきだ。「学びを放棄することが悪である」と。学びを拒み、思考を止め、差別に快感を見出そうとすることが罪なのだ。学ぶ姿勢がある人は、たとえ今は無知であっても、決して「バカ」ではない。
問題は、差別の快感が中毒性を持つことだ。人は弱者を見下すとき、ちっぽけな優越感を得る。その瞬間、自分の卑小さを忘れ、あたかも高みに立ったように感じる。この快感は一時的な麻薬に似ている。だが、現実には何も変わっていない。むしろ差別を繰り返すほどに、他者を理解する力は弱まり、心はさらに貧しくなっていく。差別は人を幸福にするどころか、より深い愚かさへと沈めていく。だから差別を趣味にしてはならない。差別は人間の心を腐らせる「悪の娯楽」だからだ。
勉強することは、この悪の娯楽から人を救う唯一の方法である。学べば、自分と異なる価値観や文化の背後にある歴史や必然を理解できる。学べば、安易に敵や劣等を作る必要がなくなる。学べば、優越感の麻薬に頼らずとも生きていける。学びは差別の解毒剤であり、理性は人間を人間たらしめる最大の防御なのだ。
だから、人類はみんな勉強しなければならない。勉強を怠ることは、自分を差別者にしてしまう危険を孕んでいるからだ。バカであることは、他者を傷つけ、社会を壊す「罪」なのだ。差別を防ぐために学び続けることは、すべての人間に課せられた最低限の義務である。
そして、この義務を果たすことは、単に「悪を避けるため」だけではない。学びによって人間は豊かになる。無知が生む恐怖や憎悪から解放され、他者を理解する力が広がるとき、人生はより広大な風景を見せてくれる。差別をしない人間は、差別に頼る必要がない人間であり、それは強さであり、自由であり、幸福そのものなのだ。
差別は人間の暗い趣味である。だが人間には、もう一つの趣味がある。学ぶことだ。学びは世界を広げ、心を鍛え、人生を面白くする。人は無知による「差別の快感」に溺れるか、「知の喜び」に生きるか、その二つの道のどちらかを選ばなければならない。私は「知の喜び」を選びたい。なぜなら、学びを続ける人間だけが、差別を超えて、本当に自由で幸せな人間になれるのだから。
【差別】無知は差別を生み、差別は悪を生む 晋子(しんこ)@思想家・哲学者 @shinko
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