第2話 齟齬
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Mとの間には、何とも言えない齟齬感があると思っている。
ひとつは、誘って断られたことが何度もあったこと。なんか変だなって、いつものMと違う感じがしたんだ。そういう違和感が一つ目。
もうひとつは、Mが私が住んでいる所のホテルに来たときのこと。
「めるみたいな人には子どものころから出会っていたから、そういう人その辺に当たり前にいると思っていた。けど、50年ずっとそういう人探してたけれど、50年経ってもめるみたいな人は見つからなかった」って結論づけて、それを言いに来たみたいに話していたのね。
「50年間、私に向き合ってくれてなくて、他の人を探していた」って言うわけで、そんなの変だよねって思ったんだ。
私だって何回も家に電話したし、携帯番号を知らなかったり、田舎の番号からかかってきたら出ないこともあったかもしれない。
もっとしつこく連絡を取ればよかったのかもしれないけど、そこまでの用事があったわけでもないし、一度も30年間通じなかったことも事実だった。そういうことが積み重なっていたんだよね。
蓋を開けてみれば、「50年間、私の代わりを探していた」「この人は間違いがない」と言って命がけで来てくれた、その気持ちは本当に嬉しい。でも同時に、その間の複雑な気持ちもあったんだ。
「Mは他の人を探してたんだ」って思うと、誰かの代わりなんているわけないじゃない、とも感じる。
それだけ、私のことを大切に思ってくれていたんだろうとも思う。確かに、遠くに行ってしまった私にも責任はあるよね。ごめんね。
だって、Mは若い時、一人暮らしをするタイミングで「私と一緒に住もう」「二人で暮らそうか」ってまで言ってくれた人だった。寂しかっただろうし、探してくれたんだよね。ごめんね、よくわかっていなかった。
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