第4話──炎の魔女との邂逅


十字架の魔法陣が光り、フレアの炎は狂ったように燃え上がった。

群衆は歓声を上げ、さらに火を煽る。


だがアリアのタクトが掲げられ、響く歌声が炎を包み込んだ。

旋律は柔らかくも強く、荒れ狂う焔を静めていく。


「……止まった……?」

「炎が……消えていく……!」


驚愕する人々を前に、アリアは冷たい視線を投げた。

「恥を知りなさい。他者を縛り、苦しめ、笑っているあなたたちこそ卑しいわ。」


群衆は言葉を失い、やがて十字架を外すしかなかった。



夜。森の中。

フレアは焚き火の前に座り、まだ荒い息を吐いていた。

燃えるような赤髪が揺れ、瞳には強さと脆さが同居している。


「……助けてくれて……ありがとう。

 でも、どうして? 魔女に関われば、あなたも狩られるのに……」


アリアは腕を組み、焚き火を見つめたまま言った。

「関わらなければ、あなたは死んでいた。

 それで見て見ぬふりをするくらいなら、“卑しき魔女”と呼ばれた方がましよ。」


フレアの瞳が揺れる。

強気な彼女の頬に、熱い涙がこぼれた。


「……あんた、強いね。」

「いいえ。」

アリアは微笑む。

「ただ、泣いている人を放っておけないだけ。」


その夜、二人は焚き火を挟んで語り合った。

孤独と恐怖、そして守りたいもののために掟を破る覚悟を。


──こうして、アリアの旅は一人から二人へと広がった。

それは、やがて世界を揺るがす大きな物語へと繋がっていく。

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