第4話──炎の魔女との邂逅
十字架の魔法陣が光り、フレアの炎は狂ったように燃え上がった。
群衆は歓声を上げ、さらに火を煽る。
だがアリアのタクトが掲げられ、響く歌声が炎を包み込んだ。
旋律は柔らかくも強く、荒れ狂う焔を静めていく。
「……止まった……?」
「炎が……消えていく……!」
驚愕する人々を前に、アリアは冷たい視線を投げた。
「恥を知りなさい。他者を縛り、苦しめ、笑っているあなたたちこそ卑しいわ。」
群衆は言葉を失い、やがて十字架を外すしかなかった。
◇
夜。森の中。
フレアは焚き火の前に座り、まだ荒い息を吐いていた。
燃えるような赤髪が揺れ、瞳には強さと脆さが同居している。
「……助けてくれて……ありがとう。
でも、どうして? 魔女に関われば、あなたも狩られるのに……」
アリアは腕を組み、焚き火を見つめたまま言った。
「関わらなければ、あなたは死んでいた。
それで見て見ぬふりをするくらいなら、“卑しき魔女”と呼ばれた方がましよ。」
フレアの瞳が揺れる。
強気な彼女の頬に、熱い涙がこぼれた。
「……あんた、強いね。」
「いいえ。」
アリアは微笑む。
「ただ、泣いている人を放っておけないだけ。」
その夜、二人は焚き火を挟んで語り合った。
孤独と恐怖、そして守りたいもののために掟を破る覚悟を。
──こうして、アリアの旅は一人から二人へと広がった。
それは、やがて世界を揺るがす大きな物語へと繋がっていく。
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