第24話 ネクロマンサー③

レムの問いに、モーリーの目が輝く。

「ああ! それぐらいなら見分けがつくと思う。えっとね、ここ」

モーリーが身を乗り出して、焼死体の骨盤を指さす。

「骨盤の形は男と女で違うんだよね。女の方が子供を産むから広いみたい。あとは骨盤の下の骨の形も」

彼女の指先が骨盤の下、恥骨のあたりに向く。

「で、どっちだ?」

「そうね、これはたぶん……」

モーリーが厚い唇に指を当て、しばし思案する。

「うん。きっと男ね。つまり、この人は、人間の大人の男だった」

「一応尋ねるが……骨の性別を変える魔法……なんてのはねえよな」

「聞いたことないねえ、生きてる人間ならまだしも。骨になっちゃうと、要はただの物体だから、かえっていじるのは難しい気がする。どこかで綻びが出そう」

「そうか。ま、そうだろうな」

レムが心の中でため息をつく。予想はしていたことだ。そもそもこの魔法の国には、法医学がない。骨を見れば男女の違いがわかり、それを捜査局が利用するといった発想自体、殺人犯にとって思いもよらぬことだろう。そんなことに注意を払う必要はない。少なくともこの骨には、何かの工作はされていない。リシェル夫人の指環が嵌められていた以外は。

そうだ。この骨は、リシェル夫人の身代わりとして燃やされた、別の男の骨。リシェル夫人に見えるように偽装されて。

その事実がが今、ハッキリした。これはやはり殺人だとレムの勘がいよいよ告げている。


後ろから、杖が床に倒れる音がした。そのまま床を転がって乾いた音を立てている。

声は聞こえてこない。

レムは後ろを見られなかった。ギリーは、その少女は今、どんな顔をしているのだろう、と思うだけだった。

「やっぱりそうか。いや、聞いたことはあったんだが、見分ける自信がなくてよ」

「あら! あなたも死体に興味があるの? お友達になれそう!」

「いやそういう興味はねえ」

「なんだぁ~残念」

モーリーは笑顔で手をひらひらさせる。

レムもわずかに笑みを浮かべる。

「だが助かった。見たときから違和感はあったんだが、これで……」

その瞬間、駆け出す足音が後ろから聞こえた。

モーリーとレムが振り向いたときには、倉庫の扉がガンッと音を立てて閉められていた。


ギリーの姿はない。

ケセとパサが慌てて飛び立ち、閉められた扉に向かう。

杖が転がってレムの足元に当たる。

「ギリー?」

モーリーの声が静寂の中、響く。

レムは少し頭を抱え、扉に向かった。

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