第13話 魔法捜査局①

広場には、魔法書を抱えた学生、魔石を売る商人、小さな妖精に荷物を運ばせる貴婦人など――この世界の“市民の朝”が広がっている。

いまだにレムはその光景が"絵本かゲームの世界"の風景にしか見えない。

彼らは2mを超えるゴーレムの姿を見ると、一様に驚き、自然と道を開ける。


レムが進むと、ビルディアの中心、円形広場を見下ろす丘の上に、塔のような庁舎がそびえている。

魔法捜査局の庁舎だ。屋根の上には五芒星をかたどったシンボルマーク。

壁は黒曜石のような黒光りを放ち、窓の縁には魔法文字が刻まれている。

門の前では、杖を持った警備の魔法捜査官が通行人を見送っていた。


庁舎の天井のホールは高かった。

宙を飛ぶ妖精たちが、書類束を運んで列をなしている。

受付では黒衣の捜査官たちが、町人たちの訴えをさばいている。

レムはその人混みの中を縮こまって―その効果はこころもとないが―抜けていく。石畳の床に、ずしん、ずしんと重い足音。

ここでも人々が驚き、道を空ける。

受付の一角では捜査官の男が、カーペットを抱えた町人を前に書類を書いている。

「それで、あんたが絨毯に乗って飛んでたところを下から飛んできた箒が当たってきたんだね? こう、斜めに」

「そうだよ、しかも逃げていきやがった。はやく捕まえてよ、まほそうさん」

(魔法捜査官、略して“まほそう”か……)

隣のカウンターからは別の声。

「ワインに経年劣化の魔法をかけるのは偽装になりまして、罰金は三万五千クラベルですね」

「いやまだ売ってないし、一本だけですから、見逃してくれませんか」

「ダメです」

(……本当に警察みてぇだな)


レムが歩く先に、ギリーが仁王立ちしていた。

「遅いぞ! いつまで観光しているつもりだ!」

「観光じゃねえ。この国がどんな国か知っておきたかっただけだ。道に迷ったが」

「やはりケセとパサを案内に付けるべきだったな」

杖と箒をケセとパサが器用に持ち、後ろを飛んでいる。

ギリーはご機嫌な鼻歌を歌いながら、先頭に立ち歩き出す。

(ったく、俺を馬でも飼い猫でも思ってやがる……)

レムは通路の奥へと歩きながら、

「昨日連行したサダナ子爵の様子はどうなってる? 取り調べはするのか?」

「あのつまらん取り調べか? そんなことはパンザロールに任せておけばいい」

(もう解決した気になってやがる……ここから証拠固めが必要だってのに……この国じゃそんなに裁判は緩いのか、いや、単にこの魔女っ子が能天気なだけの可能性もあるか)

ギリーとレムは奥の廊下へ進む。受付の喧騒は次第に小さくなっていった。

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