第7話 無事な帰還と問題点



ルーデスたちがダンジョンから出発して、約三時間が経った。

その間、俺たちは夕食をDPと交換して食べ、ダンジョン内でまったりしていた。


元の世界に帰れるか分からないが、試すには来た時と同じ時間にしないといけない。

それにダンジョンを育てるにも、ルーデスたちの成果待ちだ。

一応森の動物や魔物が、間違ってダンジョンに入ってこないように警戒はしているが、今のところそんな気配もなかった。


「……暇ね~」

「まあ、俺たちに何かできるわけでもないからな~。

それに、DPの無駄遣いもできないし……」

「あ~! 早く帰ってきなさい、ルーデスたち!」


暇すぎて、イライラしているパルが叫ぶ。

それにしても、パルって食事をしたことがなかったそうで、俺の用意した夕食をおいしいおいしいと嬉しそうに食べていた。


たぶん、ダンジョンコアとして食事をとらなくてもいい体なのだろう。

人化したことで食事をしてみたいと、俺の夕食を強請ってきたんだよな~。


まあ、DPの交換ですぐに用意できるし、交換数字も一ケタで微々たる消費だからな……。



そんなこんなでさらに一時間が経過した頃、ルーデスが帰ってきた。

しかも、俺の想像以上にデカいオークの死体を担いできたのだ……。


『た、ただいま……』

「お、お帰りルーデス。

ところで他の二人は? 一緒に行動していなかったのか?」

「ふぅ~~~」


そう息を吐くと、担いでいたデカいオークの死体をその場に置いた。

ズシンと、かなりの重量のある音がした。


『ルーシィとクラインは、こっちで合流するそうです。

俺たち三人とも、オークを探してバラバラに森を探索していましたから……』

「そうか……、オークを居場所が分かるものが必要だな……」


これは、気が付かなかった。

確かに魔物なり動物なり、居場所が分からなければ倒しようもないからな。

DPと交換で、探せる道具があればいいのだが……。


俺がDP交換画面を出現させて、リストから探していると、パルがキラキラした目でオークの死体に近づいた。


「ルーデス、ルーデス。

これが、あの森の中にいたオークかえ?」

『はい、そうです』

「はあ~、思ってた以上に大きいのう~」

『……ええ、いきなり現れたときは驚きました』

「じゃろうなぁ~。

ワシの目の前に現れても、驚くじゃろうなあ~」


二人がオークの大きさの感想を話していると、ルーシィとクラインが、オークの死体を二体ずつ担いでダンジョンに入ってきた。


『ただいま戻りましたわ』

『同じく』

「おお、ルーシィにクライン。

二人とも無事に戻ってくれて、ワシは嬉しいぞ!」


ルーシィとクラインは、ルーデスの置いたオークの死体の側に担いできたオークの死体を並べる。

大きさはどれも同じようで、違いがあるとすれば若干、ルーデスの倒したオークの横幅が大きかったことか。


「……フム、どのオークも背丈は変わらんが、横幅でルーデスのオークが若干大きいようじゃ。じゃが三人とも、よう無事でオークを狩ってきたの!」

『ありがとうございます』

『悔しいわねぇ、負けたみたいで……』

『まあとりあえず、全員無事でよかった……』

『……そうね』


オーク五体の死体と魔石で、どれくらいのDPになるか。

と、その前に気配察知の魔道具のゴーグルがあったので、DPと交換しておく。

これがあれば、次からは三人で行動できるだろう。


「……よし」


ゴーグル型魔道具を手に、ルーデスたちの元に近づく。

さっき帰ってきたルーシィとクラインも、目立った傷もなく無事に帰還してくれた。


「ルーシィ、クライン、よく無事で帰ってきてくれた」

『はい、ありがとうございます』

『ありがとうございます』

「さっきルーデスから聞いたんだが、オークを探してバラバラに行動したんだって?」

『はい、一緒に探すよりも効率がいいと思いましたので』

『通信機がありましたから、連絡は取りあえましたから』


なるほど、通信機があったからか。

小道具一式の中に入れておいてよかったが、もしなければ一緒に行動したのかも……。


「とりあえず気配察知の魔道具を手に入れたから、次からはこれを使ってオーク狩りをしてもらえるか?」

『助かります、マスター』

『ありがとうございます』

『使わせてもらいます……』


といってもこの魔道具が使えるのって、ルーデスしか無理なんだよな。

ルーシィはサイボーグ化しているから魔道具が反応しないし、クラインにいたってはほぼロボットだからな。


どちらも特殊ゴーレムなのに、魔力がないというのもおかしな話だよな……。


「あ、それと、狩ってきたオークなどの魔物は、あそこにある穴に放り込んでおいてくれるか。穴の底でダンジョンに吸収するようにしておいたから」

『分かりました』

『……あの穴ですね。了解です』

『分かりました』


三人それぞれが返事をした後、それぞれが運び込んできたオークの元へ移動していった。



「……のう、太一。

あの気配察知の魔道具、どれだけかかったかの?」

「DPか? えっと、一つ五百だな。

今回は、ルーデスの分だけ用意したんだ」

「なるほどのう……」


……パルは、分かっているという表情をしている。

ルーシィとクラインが、魔道具を使用することができないことを。


「……三人も無事に帰還したし、今日はもう寝るか」

「ならば、ダンジョンの入り口を閉めておくぞ?」

「ああ、戸締りはきちんとな」


今いるダンジョンは、敵を迎え入れて倒すダンジョンではない。

そしてこの先も、敵を迎え入れて倒すダンジョンにはしない予定だ。


では、どんなダンジョンにするか?

それはDPが溜まってから、追々分かることだろう……。




▽    ▽    ▽




Side ???


太一たちのダンジョンがある森の一角に、馬車が一台止まっていた。

こんな魔物がうろつく森に、何故か?


御者席に座る人影が二つ。

その一人が、もう一人に話しかける。


「おい、もう夜だぞ?

いくら魔物除けの魔道具があるからって、強い個体がいないわけじゃない。

本当に、この場所で間違いないんだよな?」

「貴族様の指示だぞ?

間違いであっても言うこと聞くしかないんだよ……」

「おいおい……」


その時、前方の暗闇から光が近づいてくる。

それと同時に、馬車が走る音も聞こえてきた……。


「来たか……」


胸をなでおろす男たち。

やがて、止まっている馬車の隣に横付けするように、走ってきた馬車が停止する。


「待っていましたぜ、伯爵様……」







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