第6話 オークとの戦闘



Side ルーデス


特殊ゴーレムとして召喚された俺たちは、マスターのダンジョンを出てからオークという魔物を探して、かれこれ十分ほど森の中を移動してきた。

だが、何故かオークという魔物が見つからない……。


『見つからないな……』

『ルーデスの方も?

こっちも、見つからないわ。クラインの方はどう?』

『……』


クラインからの応答がない。

その代わり、耳に装着した通信機からは、何かの鳴き声だけが聞こえている。


……もしかして、クラインのすぐ近くに何かいる?


『ルーシィ』

『クラインの位置は分かるわ。

ルーデスの今いる場所から、南へ少し行った場所よ。

合流しましょう』

『了解。慎重にな』

『そっちこそ』


通信を切ると、すぐに移動するための行動に移る。


小道具のコンパスを取り出して方角を確認。ルーシィやクラインなら、こういう小道具は必要ないんだが、あいにく俺は特殊ゴーレムとはいえ生身なのだ。

機械部分がないため、こういう小道具に頼らないといけない……。


方角を確認後、周りに注意しながら移動を開始。

森の中は隠れる場所が多く、見つかり難いために移動するには便利だが、それは敵にもいえるのだ。

つまり、敵を見つけるのも難しいということだ……。



『こちらルーシィ、クラインと合流したわ。

ッ! ハアッ!!』

『現在ッ! せ、戦闘中!!

――――ブギイイイィィッ!!

……接近、注意されたしッ!』

『りょ、了解……』


向こうは、ルーシィが合流したことで戦闘が始まったか?

それとも、戦闘中に合流したか。

とにかく今は、俺も合流を急ごう。


ルーシィとクラインだけで対処は可能な気がするが、戦場では何が起きるか分からないからな……。


森を目的の方角へと向かっていると、左側の木々の間から、一体のオークが飛び出してきた!


『何ッ!?』

――――ブギャアアッ!!


マスターの知識の中にあるオーク同様、二足歩行の豚頭だが、俺より大きくデカい!

パッと見、身長は三メートルほどあるし横幅もかなりある。

何より金棒のような棍棒を持って、俺を睨みつけながら唸っている。


あれは、俺を逃がすつもりがない目だ……。


――――グルルルルル!!

『……』


俺も同じようにオークを睨みながら、間合いを測る。

ちょっとでも目を逸らせば、一気に襲いかかってきそうだ……。


腰に差していたサバイバルナイフをゆっくりと抜いて構えると、その巨体からは考えられないような突進力で、俺にオークが襲いかかってきた!


『ッ!』

――――ゴアアッ!!


オークの金棒が、俺の左側からすごいスピードで迫ってくる!

俺はそれを認識すると、すぐにオークの懐に飛び込み、金棒を振り回しているオークの右腕の勢いを利用して、背負い投げで投げ飛ばした!


――――ブギイィッ!!


投げ落としたオークの下の地面が、蜘蛛の巣状に大きくひび割れるほどの衝撃に、受けたオークは叫び声をあげた。


『どうだ!』

――――ガブッ!


受けた衝撃に、堪らず血を吐くオーク。

動きも鈍くなり、持っていた金棒のような棍棒もいつの間にか手放していた。


俺はチャンスとばかりに、持っていたサバイバルナイフを、オークの首と鎖骨の間に、勢いをつけて深々と差し込んだ!


――――ガッ、ガブッ、ゴブッ


オークの体がぴくぴくと反応しながら、濃い血を口から吐き出す。

やがて、オークは動かなくなった……。


『……た、倒した……』


オークが動かなくなるまで握っていたサバイバルナイフの柄を放すと、地面に腰を付けて座り込んでしまった。


特殊ゴーレムとしてこの世界に召喚され、初めて魔物との戦闘だ。

しかも、ここまでデカい個体のオークは、マスターから引き継いだ知識にもなかった。


『もしかして、ユニーク個体というやつか?』


横たわるオークについて考証していると、戦闘中だったルーシィから通信が入った。


『こちらルーシィ、ルーデス、聞こえる?』

『……こちらルーデス。聞こえるぞ。そっちは大丈夫だったか?』

『こちらクライン。

俺を発見したオークとの戦闘は終わった。

合流してくれたルーシィが参戦してくれたおかげで、四体のオークを討伐することができた。こっちに合流できるか?』


クラインとルーシィは、四体ものオークを相手にしていたのか。

俺は、足元に横たわるオークを見て、クラインとルーシィの強さに感心してしまった。

こんなオークを四体か……。


『あ~、俺もオークの個体と戦闘になって、何とか倒すことができた。

これからマスターのダンジョンに運ぶから、そっちで合流しよう』

『了解。後でどうやって倒したか教えてよ、ルーデス』

『俺も興味ある』

『了解。それじゃあ後で』


そこで通信が切れる。

さて、このデカいオークを運ばないとな……。




▽    ▽    ▽




Side ルーシィ


通信が切れてから、クラインに向き直る。


『ルーデスの倒したオークって、単体だったみたいね』

『おそらくな。

……たぶん、ハグレだったんだろう』


クラインの言うように、ハグレの個体だと思われる。

そうじゃないと、いくら戦闘なれしたルーデスでも、魔物を倒すことはできなかったのでは……。


私の足元に転がる複数のオークの死体。

全長が三メートル近くあり、マスターの知識通りの二足歩行の豚頭だった。

持っていた武器もシンプルで、棍棒か太い金属棒のみだった。


『ルーシィ、ダンジョンまで運んでしまおう。

マスターたちも待っているだろうし、ルーデスとも合流しないとな』

『……そうね』


クラインは両肩に、オークの死体をそれぞれ乗せて運ぶようだ。

私も、クラインと同じようにオークを担ぐと、マスターのダンジョンの方向へ歩き出した。






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