第5話 召喚したゴーレムたち 後
とにかくパルを落ち着かせてから、二体目の特殊ゴーレムの説明をする。
「いいか、パル。
この特殊ゴーレムである彼女は、俺の知識の中にあるアニメを参考にして召喚した。
見た目は普通の女性と変わらないが、中身がまるで違う。
全身の骨格から内臓にいたるまで機械に入れ替えた、所謂戦闘サイボーグというものになっている」
「……」
「そして何よりパルが要望した『ロケットパンチ』を、彼女は撃つことができるんだよ!」
「何だってーっ!?」
俺の説明を大人しく聞きながら、だんだんと彼女に興味を持ち始めた頃、俺がパル待望のロケットパンチの話をしたことで、パルの彼女を見る目が変わる。
興味から、尊敬の眼差しへと……。
そして、今すぐみたいと言わんばかりの目で俺を見たパル。
だがここに、的になるような物はない。
何故なら今いるここは、草原だけのダンジョンの中なのだから……。
「悪いが、今ここでやってもらうことはできない」
「ええ~」
「パル、周りを見てみろ。
ここは、草原しかないダンジョンの中だ。的になりそうな障害物がないんだ。
だから今は、とりあえず我慢してくれ」
「……しょうがない、今は我慢する」
「……それじゃあ、最後の召喚をするぞ」
「あ、その事で、ワシの要望を聞いてくれ!」
「パルの要望?
……分かった、できることなら聞いてもいいぞ」
「では、ロボットをお願いする!」
「……は?」
「だから、これぞロボットという見た目のモノをお願いする!」
「……わ、分かった。考慮してみる……」
「よろしく頼む!」
……なぜパルの奴、そんなにもロボットにこだわるのか分からないな。
確かに俺とパルの共通知識の中には、俺が今まで見てきた漫画やアニメや映画に登場したあらゆるロボットが存在する。
しかも、それぞれのロボットが登場した物語付きでだ……。
もしかして、それを見て嵌まってしまったからこだわりを持っているのか?
……まあ今は、パルの中のブームが落ち着くまではどうすることもできないな。
とりあえず、パルの要望を考慮して三体目の召喚だ。
「じゃあ行くぞ、パル!?」
「よし! いいぞ、太一!」
「DP三万を使って、特殊ゴーレムを召喚ッ!」
パルが期待する目で見つめる中、俺は画面に表示された召喚をタップする。
そして前と同様に、草の地面に召喚魔法陣が出現してすぐに、周囲から光が集まり形をある程度作ると眩しい光を放った。
眩しい光りも三回目ともなれば、それなりに俺とパルは対処できるもので、光が集まり始めた段階から目を瞑って対処した。
そして光りが収まると、召喚魔法陣の上には、全身が機械でできた一つ目のロボットが迷彩服を着て立っていた。
「キターーーーー!!」
パルは、三体目の特殊ゴーレムを見て叫ぶ。
どうやら、思い描いていた姿の特殊ゴーレムが現れて興奮しているようだ。
「……と、とりあえず説明すると、彼は昔のアニメを参考に召喚した特殊ゴーレムだ。
全身を戦争で機械化せざるをえなかったという設定で、ロボットのような見た目をしているがれっきとした人間だ……」
「はぁ~、ほぅ~、へぇ~」
「き、聞いているか? パル」
「大丈夫だ、しっかり聞いている!」
三体目の特殊ゴーレムの周りを、目をキラキラさせてうろついているパルの姿に、少し頭が痛くなってきた……。
「ところで太一、彼には名前があるのか?
もしないなら、ワシが名を送りたいのだが……」
「心配しなくても、三体とも名前はあるぞ。
最初がルーデス、そしてその次がルーシィ、最後がクラインだ」
「……そ、そうか、クライン、か……」
俺が順番に紹介すると、ゴーレムたちはその場に跪いていく。
そしてパル、名を送れなかったといってそこまで落ち込むことはないだろう……。
『マスター、我らを召喚してくださりありがとうございます』
「しゃ、喋ったぁ!」
「そりゃあ喋るだろう、顔に口もあるんだから……」
「そ、そうだな、顔に口もあれば喋れるか……」
パルは、ルーデスが喋ったことに驚いていたが、特殊ゴーレムとはいえ顔があり口があるなら喋ることができるだろう。
でもまあ、本来のゴーレムであれば喋らなかったかもな。
漫画やアニメに出てくるゴーレムは、喋るというより叫ぶといった感じだったし。
「それじゃあパル、ルーデスたちに任せて行ってもらうけどいいかな?」
「……何を任せるんだったかな?」
「……」
「分かっている!
オークを討伐して、その死体を持ち帰ってダンジョンの成長の糧とすることじゃろ?!
ちゃんと覚えておる!」
ダンジョンを育成するために必要な、魔物の死体と魔石。
その確保のために、俺たちはDPを消費して特殊ゴーレムを召喚したのだ。
当初の目的はそれだったのに、いつの間にかパルの趣味が先行してしまった。
そのために、目的を見失うところだったよ……。
「では俺からの命令を伝える。
ルーデス、ルーシィ、クラインの三人は、このダンジョンから出た先の森で、魔物のオークを何体か仕留めること。
そして、仕留めたオークの死体をここに運び込みことだ」
『ハッ!』
『了解したわ』
『お任せください』
ルーデスたちの返事を聞いた後、俺はダンジョン創造の画面を開いて出入り口を設定する。
出入り口の大きさは、倉庫の出入り口のような感じで縦横3メートル×3メートルにした。
この大きさであれば、ルーデスたちが持ち帰った死体もダンジョン内に入るだろう。
「あ、それと、コレをそれぞれ持っていけ」
俺はそう言って、DPの交換画面を操作してルーデスたちの武器を出現させる。
いくら強いとはいっても、武器なしで魔物と対峙はできないだろう。
『ありがとうございます』
『助かるわ』
『ありがたく使わせてもらいます』
サイレンサー付きハンドガンに予備の弾倉、サバイバルナイフ二本に小道具一式。
それらを装備すると、出入り口から外へ出て行った……。
俺とパルはルーデスたちを見送った後、今後の事で話し合う。
「魔物に関してはルーデスたちに任せるとして、俺たちは受け入れ態勢を整えておかないと……」
「受け入れ態勢?
ダンジョンに運び込んで吸収させる、ではダメなのか?」
「直接運び込んで草原に置いて吸収させるっていうのは、何か汚い感じがあるんだよ」
「汚いって……。
ならばどうする? 穴でも作って、そこに放り込んでもらうか?」
「ん~、残りのDPを考えると、それしかないな……」
特殊ゴーレム三体召喚で、九万DPを消費し、さらに三体分の装備でDP五千消費した。
残りDPは、三千二百だ。
これに、魔物の死体を放り込む穴を作れば、三千となる。
何かあった時のことを考えると、使えるDPは少ないな……。
ルーデスたちが無事に、魔物を倒して帰ってくることを祈るばかりだ。
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