既に彼女は愛を得て、

 前回のあらすじ


 共通ルートの2、3場面しか出番の無い肩書きだけの友人キャラがメインヒロインとエロい事してました。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺が五代ごだいユウと関係を持ったキッカケは、高校2年に上がってから最初の日曜日だった。


 高校生になってから一人暮らしをする事になった俺は、憂鬱な気持ちで『サザ○さん』を観ていた時、晩飯の材料を買い忘れていた事に気付いて商店街へ行くか、コンビニで済ますかを考えながら自転車を走らせていた。

 最終的にホットスナックをオカズに冷蔵庫に残っていたキャベツの芯を齧るという結論に達し、近くのコンビニへと向かう途中、


 公園のベンチに座り込み、涙を流す五代、


 とソレを見ながらにじり寄っているトレンチコートの怪しい人物(スネ毛の生えた足が見えた事からコートの下は全裸と思われる)を見つけた。



 不審者を乗せたパトカーのサイレンをバックに、五代が泣いていた理由を尋ねると、


 「エイスケ君と出掛ける約束してたんだけど……」


 「すっぽかされちゃった」


 エヘヘ、と困ったように笑う彼女は、いつもより身なりに気を使った、精一杯のオシャレをしていたように思う。


 「恥ずかしいなぁ、こんな似合わない格好までして」

 「お昼から今まで、ずっと、待ちぼうけ、なん、て……っ」


 言いながら、五代の目がまた潤む。


 いたたまれなくなって視線を下に向けると、五代の膝の上に乗っているバッグの中身が見えた。

 年頃の女の子が食べるには少々大きめの弁当箱が、おそらく手付かずのまま入っていた。


 きっと、空腹だったのだろう。


 「……なぁ、五代」


 俺が彼女の膝の上の弁当箱を指差して、


 「その弁当、俺が食っていい?」


 そう言ったのは、彼女への同情なんかじゃ決して無い。



 公園のベンチに座り、五代の作った弁当を大急ぎで食べ終えた俺は、彼女を家まで送り、自分も家へ帰った。


 陽はとっくに沈みきって、月と街灯の灯りに照らされた夜道を、自転車のベルを鳴らしまくりつつドラ○もんの歌を熱唱しながら自宅のアパートへと急ぐ俺はお巡りさんに呼び止められて、『夜道が怖いのは分かるけど、もう少しボリュームを抑えなさい』と叱られたのだった。


 その日から、俺と五代は少しずつ交流を重ねるようになった。

 別に恋愛的な関係ではなく、彼女の話、好きな本や映画等の他愛ない内容を俺が聞いて、相槌を打つ位の関係だ。

 そこから徐々に、俺の話を五代が聞くことも増えて、彼女の話す内容に東野とうのへの愚痴が混じるようになったのは、ゴールデンウィークが終わって、数日後の事だった。


 その頃から、五代は東野に構うのを抑えるようになった。

 いや、抑えるというよりも、東野と距離を取るようになったというのが相応しいだろう。


 今まで東野に割いていた時間を、彼女は他の同級生の友人達との交流に充てる様になった。


 当然、東野の世話は減ったのだが、本人は気にした様子は無かった。


 その頃から、東野の外見にくたびれた様子が見える様になり、『アイツひょっとして、身だしなみも五代にやらせてたのか?』とクラス内での東野の評価が少し落ちた。


 そんな事がありつつも、俺と五代の交流は続き、気付けば夏休みの半分以上を二人で過ごしていた。


 そして、夏休みの最終日。

 新学期を翌日に控えた日の夕方、俺は五代を見つけた公園で、彼女に告白を

 「小田切君、私と付き合って下さい!」

 しようとおもったら先に言われた。


 「は、はいっ! ひょろこんでっ!」


 非常に格好のつかない形ながら、俺達は恋人になった。


 さて、めでたく彼氏彼女になったものの、俺にとって非常に厳しい現実が待っている事を、翌日の学校で俺は痛感した。


 彼女は、五代ユウは、学校中の人気者であるという事実を俺は忘れていたのだ。


 彼女の周囲には、彼女を慕う者達が常に張り付いていて、二人で過ごす時間なんて全く取れなかった。


 その様子を見て、俺と五代の間にあるを、俺は嫌でも自覚する。


 校内でも最上位に位置するであろう五代カノジョと、クラスでも下の方に居るカレシ


 改めて、俺達の隔絶した距離を見せ付けられた俺は……、



 すごくムラムラした。

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