第7話 天井
サトウとの戦いが終わり、工場に静寂が戻った。サトウは警察に連行されたが、清掃パートの女性の証言もあり、情状酌量が考慮されることになった。
サトウとの一件を通じて、正社員と派遣チームの間の壁は完全に消え去った。彼らは互いの苦悩を理解し、協力して働くことの大切さを学んだのだ。
「課長、これからは全員で協力して、工場をピカピカにしましょう!」
タカシが課長に満面の笑みを向ける。課長も力強く頷き、清掃パートの女性とケンジの目を見て、感謝の言葉を述べた。
「みんな、ありがとう。本当に感謝している」
その時、一筋の光が差し込むように、工場の天井から何かが落ちてきた。
「なんだ、あれは!?」
それは、古びたUSBメモリだった。
ケンジがそれを拾い上げると、USBメモリには「ファクトリー・メモリー」と書かれていた。
「これ、もしかして…」
ケンジが顔を上げると、清掃パートの女性が静かに頷く。
「この工場は、まだ私たちに何かを伝えようとしているのかもしれない」
彼らは全員でパソコンの前に集まり、USBメモリを挿入する。画面に映し出されたのは、工場の建設当時の設計図や、過去の従業員たちの写真、そして、何十年前かの工場長の日記だった。
そこには、工場を愛し、共に働く仲間たちを大切に思う、熱い想いが綴られていた。そして、工場の天井にこのUSBメモリを隠した理由も。
「この工場が、いつか人々の心を繋ぐ場所になりますように…」
日記の最後の一文を読んだケンジの目から、涙がこぼれ落ちた。それは、この工場に働く人々の魂が、時代を超えて彼らに語りかけているようだった。
清掃パートの女性、ケンジ、タカシ、そして課長。彼らは、それぞれの立場でこの工場と向き合い、それぞれの戦いを乗り越えてきた。そして今、彼らの心は一つになり、この工場を真の「チーム」として守っていくことを誓った。
工場に再び、活気が戻った。彼らはもう、互いを「正社員」や「派遣」とは呼ばない。ただ、互いを「仲間」と呼び合い、共に笑い、共に働く日々が始まったのだ。
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