馬が合う二人は蝸牛
刺身まる
第1話
「ここのところずっと僕が奢っていないかい?」
会計をしながら言う彼女は、困ったような顔をしながらこちらを見た。
「仕方ないだろ、俺金ねぇし。」
俺はスマホで次に行くところを調べながら言う。
「バイトとか入れたらどうなんだ?」
「入れても推しに全部溶ける。」
「なんだっけ…君の推し、VTuberだっけ?」
「そうそう、性別不明の子。」
「あの声は女の子でしょ。」
「ボイチェンの可能性がまだあるど。」
「てかせめて僕とご飯に行く時くらいのお金は持ってろよ。」
「いやぁ金持ちのボンボンが親友てのはいいねぇ
俺ももっと稼げるバイト行こうかな?」
「僕のところに来るかい?」
「何故男がメイド喫茶に行けると思っている?」
「裏方とかあるじゃない?料理とか。」
「砂糖と塩間違えるやつに裏方任すのか?」
「…クグッ」
「おいてめぇ今思い出して笑ったなぁ??」
「だって…グッ…ケーキに塩いれるとは思はないじゃん!」
「ぬわぁ!俺の黒歴史がぁ…」
「と言うか次の場所は?」
「あっ後ろだわ。」
「地図…見てないの?」
「覚えてんだからいいだろ。」
「まぁいいや…今日こそはボコボコに任してやるからね?」
「何を言う!お前俺に勝ったこと一度もないどころか前コース逆走してそのまま後ろのゴール入ってたじゃねぇか」
「そっ、それは…その…あのぅあれさ!何かの気の迷いさ!」
「すんごいうれしそうにゴール!って言ってたの思い出した。」
「ぐゔ」
2人で歩く。昼下がりの春を感じさせる風を浴びながら。
話は弾み、距離感は縮まる。
周りの者はほとんど、この二人が付き合っていると思うだろう。
本人達は2人とも、自分が付き合っているなどとは思っては居ない。
ただ。ただ心の奥底で、この関係の終わりを感じてはいる。
どちらかに恋人ができる。
どちらがが離れた場所に行く。
理由は分からない。だが2人とも、この関係が終わるなら、と。
いっそのことここで告白してしまおうか。
いっそのことここで本心を出してしまおうか。
そう思っている。
そうして時は過ぎていく。
楽しい時間も。
悩む時間も。
そうして二人は蝸牛のような走りで、徐々に間を埋めていく。
馬が合う二人は蝸牛 刺身まる @souma0926
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