1分小説のお手本のような秀作

 創作落語とホラーがお得意の山本倫木さんが書かれた1分小説です。

 とてもコンパクトにぎゅっと引き締まったキレのある作品です。テーマを死体と桜だけに絞って、その分、情景描写と心理描写を充実させているのが伝わってきます。
 冒頭の「祖父の家にある桜の古木は、春が訪れるたび見事な花を咲かせる。ある年、祖父がぽつぽつと語ってくれた。あれはタロウが咲かせてくれているんだ、と。」で70字くらい使っちゃって勿体ない気もしますが、この2行の情緒ある文章で引き締まって、ぐっと引き込まれますね。

 短いので、ストーリーを語るとネタバレが激しいのでやめておきますが、ホラー色は薄目ながら、なんとも気味の悪い人間心理を垣間見ることのできる作品です。

 1分小説のお手本のような見事な作品でした。
 これはお勧めです。ぜひどうぞ。

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