第2話 偶然の再会
翌日の昼休み。学食のざわめきの中で、美緒はトレーを持ちながら空いている席を探していた。
周りは新学期の活気に満ち、どのテーブルも友人同士でにぎやかだ。ひとりで座るのは少し心細い。そんなとき
「美緒さん、こっち空いてるよ」
声に振り返ると、昨日出会った遼が手を振っていた。
白いシャツに細身の黒のパンツ。
カジュアルなのにどこか整っていて、やはり目立つ存在だ。
「昨日はどうも。サークル、楽しめそう?」
「……うん。まだ緊張してるけど」
向かいに座ると、不思議と落ち着いた。遼の話し方は穏やかで、気遣いが自然だった。
学食のカレーを食べながら、美緒は思わず笑顔になっている自分に気づいた。
「実は俺、こうして学食に来るの久しぶりなんだ」
「え? どうして?」
「家が遠いし、普段は外で食べることが多いから」
そう言いながら遼は笑った。その笑顔に、少しだけ引っかかる感覚が美緒の胸に残った。
言葉自体は何もおかしくないのに、なぜか自然さを欠いているように思えたのだ。
食事を終えたあと、二人は一緒にキャンパスを歩いた。
春の風が髪を揺らし、青空の下で並んで歩く自分たちの姿が、まるで昔からの知り合いのように感じられた。
「ねえ、美緒さん」
不意に遼が立ち止まり、真剣な瞳でこちらを見つめてきた。
「もしよかったら、また一緒に出かけない?」
胸が大きく跳ねる。
昨日出会ったばかりなのに、距離が急に縮まっていくようで、美緒は戸惑った。
けれど、その瞳の奥にあるものをまっすぐに見つめ返したとき
「この人を信じてもいいのかもしれない」と思ってしまった。
しかし、その直感はまだ甘かった。
遼の言葉のいくつかは、やはり偽りだったのだ。
それを知るのは、もう少し先のことになる。
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