17、分からない

 ある時、私が集落の外を歩いていると、見知らぬ男たちが前方から歩いてきた。

 見慣れない服装をしている彼らは、キョロキョロと辺りを見渡している。

 いったいどこの人たちだろう?

 そう疑問に思っていると、一人の男と目が合った。

 するとその男は、私と目が合うや、周りの男たちに何かを話し、一斉にこちらへ駆け寄ってきた。

 そしてその一人――最も目立つ服装をしている男が、私に何かを言い始めた。

 だが、何を言っているのか分からない。

 困惑する私を他所に、男は続けて平原の方を指差した。

 そちらへ振り向くと、そこには一匹の生き物がいた。

 けれど、相変わらず何を言っているのか分からない。

 この状況に耐えかねた私は、

「分からない」

 と、だけ伝えた。

 すると言葉が伝わったのだろうか、彼らは私に何か言うと、そのまま去って行った。

 結局なんだったのか?

 この時の私は知る由もなかった。


 まさかあの生き物が、後に「分からないカンガルー」と呼ばれるということに――。

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