15、視線

 私を乗せた電車が駅に到着した。

 私は読んでいた本を閉じ、人の流れに乗ってホームに降りる。

 すると、どこからか視線を感じた。

 誰だろうと思い、辺りを見渡してみる。

 だが、誰もこちらを見ることなく改札へと進んでいた。

 ――気のせいかな?

 疑問に思うも、私はそのまま改札を出た。


 しかし、駅を出てもなお視線を感じた。

 ――やっぱり気のせいじゃない!

 心臓がドクドクと早鐘を打つ。

 暗闇の中、私は駆けるように帰宅した。


 玄関の扉を開けると、私は急いで扉を閉めた。

 安心感で全身が脱力し、その場に座り込む。

「これでもう大丈夫……」

 だがそう呟いた直後、私の背筋にゾッと悪寒が走った。


 また視線を感じたのだ。


「もうやだっ!」

 うずくまるように頭を抱えたその時、私はあることを思い出す。

 電車で読んでいた短編小説集だ。

 その一つの最後に、こう書かれていた。


『その時、私は気づいてしまった。ずっと感じていた視線の正体――それが、のものだということに。』

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