13、伽

 僕は生まれつき病弱だった。

 外に出られる事は滅多になく、一日の大半を布団の上で過ごしてきた。

 兄弟や友だちはおらず、両親も毎日仕事で家にいない。

 だから日中はいつも独りだった。

 けれど、そんな僕に楽しみをくれたのが"トギさん"だった。

 一年前のある日、トギさんは突然僕の家にやって来た。

 最初は知らないおじさんの姿に驚いたけど、トギさんとお話しているうちにすっかり仲良くなった。

 それ以来、毎日僕の部屋へやって来ては、夕方までいろんなお話をしてくれた。

 そんなトギさんとの時間は、僕にとって幸せなものだった。






 その晩、少年は亡くなってしまった。

 風邪を拗らせてしまい、そのままだったそうだ。

「……また退屈になっちまったなァ」

 俺は煙草を咥えると、指先に火を灯して煙草の先端に近づけた。実に一年ぶりの喫煙だ。

「……次は何処に行こうかねェ」

 呟いた言葉が煙と共に闇夜へ消えてゆく。

 何百年にも積もるこの御伽噺おとぎばなし、今度は誰に語ろうか。

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