11、英雄誕生

『ここは……』

 気がつくと、そこは暗闇だった。

 何も見えない。

 俺は誰かいないのかと尋ねようとした。

 だが、声が出なかった。

『なんで』

 周りも見えない。声も出ない。

 不可思議な現象に、思わず頭を悩ませる。

 ――まさか、金縛り?

 疑問に思った俺は、試しに体を動かしてみた。

 すると、手も足も思ったように動かすことができた。

 どうやら金縛りではないらしい。

 そう思った直後、俺はふと違和感を覚えた。

 俺の背中の辺りが、何やらベタついている感じがするのだ。

 続けて感じたのは、何かに揺られているような感覚。

 加えて、水が流れる音も聞こえてきた。

『もしかして何かに乗って流されてる?』

 そう疑問を抱いた瞬間、今度は持ち上げられたような感覚がした。

 もう訳が分からない。

 混乱していると、突然暗闇に一筋の切れ目が入り、俺の目に光が飛び込んできた。

 思わず目を瞑ったが、やがて恐る恐る目を開けてみた。

 するとそこには、なたを持った老夫婦がいたのだった。

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