7、探し物

 ある時、お爺さんが尋ねた。

「眼鏡はどこにいったかの?」

 すると、お婆さんは笑って答えた。

「頭の上に掛けてるじゃないの」

 と。


 またある時、お爺さんが尋ねた。

「薬はどこにいったかの?」

 すると、お婆さんは苦笑して答えた。

「机の上の小箱に入れてたじゃないの」

 と。


 またある時、お爺さんが尋ねた。

「娘はどこにいったかの?」

 すると、お婆さんはしみじみと答えた。

「ごほっ、もう何年も前に結婚して出て行ったじゃないの」

 と。


 またある時、お爺さんが尋ねた。

「もう片方の靴下はどこにいったかの?」

 すると、お婆さんは布団に横たわりながら指差して答えた。

「ごほっ、げほっ、……そこに」

 と。

 

 またある時、お爺さんが尋ねた。

「婆さんはどこにいったかの?」

 しかし、それに答える人はいなかった。


 ある時、お爺さんは尋ねるのを止めた。

「婆さん、ここにおったのか」

 すると、お婆さんは涙を浮かべながら笑って答えた。

「今回はすぐに見つかりましたね」

 と。

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