第八章 最後の記録2

夜が更けると、自販機は再び動き出した。

取り出し口から缶が転がり出ると、それぞれが子どもの頃の体験を映し出すかのようだった。


佐藤の缶は、亡き祖母がくれたオレンジジュース。

中川の缶は、初めて父と行った海水浴場で飲んだラムネ。


「……これを飲むと、消えるのか?」

佐藤は思わず缶に手を伸ばした。

しかしその瞬間、缶は空中で止まり、光を放ち、静かに自販機の中へ吸い込まれていった。


二人の体温は急速に下がり、周囲の空気も歪む。

取材班の機材は次々とノイズに侵され、映像も音声も歪み始めた。

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