第八章 最後の記録1

取材班で残されたのは、佐藤と中川の二人だけになっていた。

木村も藤田も、自販機に飲み込まれたまま戻らなかった。


佐藤は無言でカメラを回し続けた。

「これが最後の記録になるかもしれない……」

彼の声には、諦めと恐怖が混じっていた。


中川は震える手でノートを取り出した。

前回の監視中に落ちた缶のラベルや匂いを、一つずつ記録しようとしている。

だが、文字にするたびに、頭の奥で不穏な記憶が揺らぐ。


「……俺たちの記憶まで、吸われてる気がする」

中川のつぶやきに、佐藤は何も答えられなかった。

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