第七章 記憶を詰める機械2

「これは……何なんだ……」

藤田の失踪を思い出し、佐藤の手は冷たく汗ばんだ。


木村が缶を手に取り、慎重に開けた。

中から漏れた香りは、まるで過去の一瞬をそのまま凝縮したかのような匂いだった。


「……ここに、記憶が入ってる」

木村の声は震えていた。

「味じゃない。匂いでもない。映像でもない。体験……そのものが、入っている」


中川が缶を覗き込むと、子どもの頃に遊んだ公園の景色が、まるで立体映像のように浮かび上がった。

遠くで聞こえる声は、亡くなった祖父の声そのものだった。


「飲むと……吸い込まれる」

木村の言葉に、全員の血が凍る。

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