第六章 再びの張り込み3

午前2時30分。

取材班は疲労で朦朧としながらも、カメラを回し続けた。


突然、自販機の奥から「ガコン」という音と共に、缶が複数落ちてきた。

拾い上げて確認すると、すべての缶のラベルが、取材班それぞれの過去の記憶に関連するものになっていた。


木村の缶は、子どもの頃に通った学習塾のジュース。

中川の缶は、初めて父と行った夏祭りで飲んだラムネ。

佐藤の缶は、亡くなった祖母がいつも冷蔵庫に入れてくれたオレンジジュースだった。


「……これ、どういうことだ……」

藤田の失踪が、決して偶然ではなかったことを、皆が理解した瞬間だった。


冷気がさらに濃くなり、缶から微かな光が漏れ出す。

まるで自販機そのものが、人間の記憶や感情を“吸い取ろうとしている”かのようだった。


佐藤は唇を噛んだ。

「……俺たちは、もう逃げられないかもしれない」


その夜、取材班は誰も外に出られず、車の中で息を潜めながら、不可解な光と音に包まれ続けた。

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