第二章 現地調査3
「ちょっと待て、冗談だろ」
藤田がカメラを構えたまま低く言った。
だが木村は額を押さえ、必死に言葉をつなげた。
「いや……ほんとに……私、あの時の屋台を歩いてる。綿菓子の匂いまで……」
彼女の声はどこか遠のいていくようだった。
そして次の瞬間、ガコン、と再び自販機が唸りを上げた。
取り出し口には、もう一本の缶が転がり出ていた。
それは「ミルクコーヒー」。木村の故郷で十年前まで売られていた、地元限定の飲料だ。
「……おい、これ、マズいんじゃないか」
中川の声は震えていた。
佐藤は缶を手に取りながら、苦々しい表情で言った。
「仕込みじゃないとしたら……俺たちは、本当にとんでもないものに触れちまったのかもしれない」
その場に漂う冷気は、先ほどよりも濃くなっていた。
まるで、自販機そのものが呼吸をしているかのように。
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