第一章 取材班の結成3

取材班4人は、軽ワゴンに機材を積み込み、新聞記事に記されていた市街地の外れへと向かった。


移動中、助手席の木村がネット掲示板をチェックしていた。


「ほら見てください。『深夜3時に行ったら女の声が聞こえた』とか『買ったら寿命縮む』とか……。完全に怪談化してますね」


佐藤は笑った。

「視聴者はそういう“匂わせ”が大好きなんだよ。

 真偽はどうでもいい。面白ければ再生数は伸びる」


その会話を黙って聞きながら、藤田は窓の外を眺めて煙草をふかしていた。

彼だけは、何か言いたげな表情を浮かべていた。


やがて車は市街地を抜け、夕暮れの住宅地に差しかかる。

錆びついた街灯が並ぶ路地の角に、それは静かに立っていた。


赤い筐体、かすれたペプシのロゴ、薄暗い照明。

そして取り出し口からは、確かに冷気が漂っていた。


「……これが、例の自販機か」


佐藤が呟いた瞬間、取り出し口から「ガコン」という音が響いた。

誰もお金を入れていないのに、缶が一本、転がり落ちた。

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