第二章:赤い影の招待

悪夢から目が覚めて以来、俊介は眠ることに恐怖を感じていた。スマートフォンが送る奇妙なメッセージは止まず、日に日にその内容が具体的になっていく。

「お前の背後に、魚の鱗が見える」

「魚の鳴き声が、聞こえるか?」

俊介はメッセージをすべて削除し、通知をオフにした。しかし、その夜、彼の部屋の窓の外から、

「魚、魚」

という不気味な声が聞こえてきた。彼は窓に駆け寄り、外の路地を見下ろした。そこには誰もいなかったが、遠くの街灯の下、赤い服を着た幼い女の子が、こちらをじっと見上げているような気がした。

その日から、彼の日常は侵食されていった。

大学の図書館で本を読んでいると、ページに挟まれたしおりに、人間の顔をした魚の絵が描かれていた。食堂で食事をしていると、隣の席から「魚」とささやく声が聞こえた。

そして、最も恐ろしい出来事は、友人の阿偉(アウェイ)とカフェにいる時に起こった。

「最近、妙なメッセージを受け取るんだ」

俊介は意を決して、阿偉に打ち明けた。

阿偉は笑い飛ばそうとしたが、その瞬間、彼のスマホが震えた。画面には、知らない番号からのメッセージが表示されていた。

「お前も、見たんだな?」

阿偉の顔から血の気が引いた。メッセージに添付された写真を見て、彼はさらに青ざめた。それは、数日前に阿偉が遊びで撮った、二人の自撮り写真だった。しかし、その写真の背景、カフェの窓の外には、顔の半分が魚の鱗で覆われた男が写り込んでいた。

「おい、冗談だろ……」

阿偉はスマホを落とし、震え声で言った。

「あの日、あの場所に、そんな奴いなかった……」

その夜、俊介は夢を見た。今回は、森の池ではなく、台北の街中だった。

無数の「人面魚」が、アスファルトの上を跳ねながら迫ってくる。そして、その魚たちを従えるように、赤い服の少女が立っていた。彼女は俊介に微笑みかけ、手招きをした。

「こっちへ、来なよ」

その声は、なぜか幼い日の記憶を呼び覚ました。俊介は、幼い頃に両親に連れられて行った森の奥の池で、何かを見たような気がした。そして、その記憶には、いつも赤い服を着た誰かがいた。

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