第40話
「新君」
部屋の外から柊の声がして、恐る恐る扉を開けた。
すると、さっき俺が持って行ったスウェットに着替えた柊が肩にタオルをかけて立っていた。
「お、お疲れ様。早かったね」
「うん。髪乾かしてるからお風呂どうぞ」
「う、うん」
髪が濡れたままの柊の姿にドキドキしながら、俺は部屋を出てそのまま風呂場へ向かった。
そしてなぜか慌てて服を脱いで湯船へ。
ちょうどいい湯加減にホッとしながらも、すぐにまた意識が柊のことにうつる。
「……さっきまでここで、柊が風呂入ってたんだよな」
今までは意識しないようにしていたけど、告白のあとからずっとそんなことばかり考えてしまう。
今までは柊とそういうことになるかもとか、考えちゃダメだと我慢していたけど、今の思考は、いつまで我慢したらいいか、に変わってる。
付き合ってすぐはないとしても、カップルにおいて何日、何ヶ月経てばどこまでしてもいいなんて明確な定義はない。
だから余計に俺を迷わせる。
柊と付き合ってまだ数時間なのに、柊の様子はやっぱりいつもより積極的に思える。
あれが何かのサインなのか、それともただ心を許してくれてる合図なだけなのか。
わからない。
わからないからずっと考えてしまって、また迷う。
「はあ……世の中のカップルってどうしてるんだろ」
湯船に顔を埋めようとして、躊躇ってやめた。
体を洗って、冷静になってから風呂を出よう。
まだ初日だ。
いくら一つ屋根の下とはいえ、いや、だからこそ焦る必要なんかないんだ。
これから時間はたくさんある。
自然の流れに身を任せて、そのうちおれも柊と……
「新君」
シャワーを浴びようとすると、外から柊の声がした。
「は、はい?」
「新君、まだ出ない?」
「あ、もう洗ったら出るよ」
「ほんと? じゃあお部屋で待ってていい?」
「そ、それはまあ、いいけど」
「じゃあ、待ってるから」
柊はそう言ったあと、ガサガサと何か物音がしてやがて静かになった。
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