第41話

 風呂から出て。

 俺はすぐにあることに気がついた。


「着替え、持ってきてなかったっけ?」


 脱衣所のどこを見ても着替えがない。


 柊のことを考えすぎていて、持って来るのを忘れたのかどうかすら思い出せない。


 そしてもう一つ不思議なことが。


 着替えがないのはわかるとして、俺が風呂に入る前に着ていた服はどこへ行ったのか。


 まさかここまで裸できたわけはないし……もしかして柊の仕業?


「……あっ」


 ゴトンゴトンと、洗濯機が回る音がした。


 そうか、俺の服を柊が洗濯機に入れてくれたんだ。

 

 なんだ、びっくりした。

 ええと、それじゃあ……いや、何も状況はよくなってないぞ。


「……さむっ。一回風呂に入ろう」


 もう一度風呂に戻って、体を温め直しながらどうするか考えた。

 タオルを巻いて部屋に戻る、というのが一番だろうけど、部屋には柊がいるかもしれない。


 かといってこのまま洗濯が終わるまで風呂に入ったままなんてのも現実的じゃない。


 じゃあどうするかというのを考えていると、さっき柊が俺にしたことがそのまま今回使えることに気づいた。


 幸い、スマホは脱衣所に置いてある。


 ……恥を忍んで電話するか。


「……もしもし」

「どうしたの? 何かあった?」

「あ、いや……その、服がさ」

 

 着替えを持ってきてほしいとストレートに言えずモゴモゴしていると、なぜか電話の向こうの柊も。


「え、え、服? あ、服、うんすぐもっていく!」

「え? いや、あの、着替えどこに置いてるかわかる?」

「わ、わかるわかる! すぐ行くから待ってて」

「あっ、ちょっ」


 ブチっと電話が切られた。


「……なんだったんだろ」


 と、戸惑っているとすぐ、外でバタバタと足音が聞こえて。


「ふ、服ここに置いとくから! じゃあ、部屋で待ってるね!」


 また、バタバタと足音が遠くなっていった。

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