第3話
唐突だが天王寺悠という男について話しておこう。今から5年前、日本の魔導学園グリモワール魔導学園を主席で卒業し魔導師の始祖家の中で日本の御三家の天王寺家に養子入りをし魔導省に入庁した誰もが認める天才魔導士だった。その手腕を買われて入庁して直ぐに魔導省の精鋭部隊、《八咫烏》のNo.13 死神として入隊。その後は外道魔導士との戦いの最前線に身を置く。そして今から1年前に発生した大規模テロの鎮静化の為、出動し魔導師特有の精神疾患を発症し最前線からは離脱。その後は後方支援に従事しつつも度々、前線に戻ってはいたが以前程の魔術を行使する事が出来ず、止む無く相手を殺害してしまっては発作を起こしてしまい魔薬の投与で治療して誤魔化していた。そんな最中に起こった今回の立て籠り事件で再び前線に立った悠は案の定、また発作を起こした。その後悠の手により事件は解決し悠は魔導省管轄の病院で入院していた。
「ああ、嫌な夢見た」
悠はそう言って起き上がると病室の戸棚に手を伸ばしてローブの中に入っている黒い小さなケースを取り出す。そしてそのケースを開けると中には銃弾が入っていたが6発分の弾丸が無いことを確認する。そしてここ数日、自分が眠ったままだった事を思い返す。
「解決出来たのか?」
「ああ出来たよ。お前のお陰でな。あの時にお前が行ってくれなかったら間に合わなかったらしいぞ《星》の伊黒がそう言っていたよ。それとお前の使った魔導機の使用申請書類無しでの使用に関しても緊急時の為って理由でお咎めは無し。一応確認しとくけど使ったのはリボルバーと睡眠弾、爆裂弾、響音弾、閃光弾と魔薬とローブだけで間違いないな」
水戸坂の質問に頷きながら悠は質問をする
「ああ間違いない。ってか伊黒は?」
「あいつならお前がぶっ倒したロウって名前の外道魔導士を取り調べてる。それと今度はこっちから一つ質問。お前の押収した魔導機、《吸魔の怪刃》を扱っていた魔導士、お前どうした?」
「嫌な質問をするな。なんとなくは察しているだろうに。俺が始末してその場で火葬した、骨ごとな」
悠は苦虫を噛み潰したような表情をしながら応えた。
「そうか、いや本当に悪いな。ある程度は察していたけど上の連中はそんな事知らねって感じだから確認しないといけなくてな。じゃあゆっくり休めよ」
それだけ言って水戸坂は病室を出て行った。そして今度はローブから大きめのグレーのケースを開ける。中には大量の火薬や魔薬、そして魔術触媒が入っていた。
(なんかあった時の為に補充しとかないなとな)
《我が汝に望むは友の安らかな姿》
錬金術で作製した弾丸に魔術触媒と魔薬を調合した粉末を付着させ魔術処理を施す。すると青い光を放ちやがて光が消えるとそこには水色の魔術刻印が施された睡眠弾が完成する。その後も似たような動作で魔術弾を作成していき弾薬ケースにしまっていく。
「ああ暇だな〜この部屋TVも置いてねーし、病室の外出ようかな」
そう言って立ち上がり病室のドアを悠が開けようとした瞬間にドアの向こうから大剣が飛んで来た。間一髪と行ったところで黒髪の女性が大剣を担いで病室に入って来た。
「何処行く気かな〜まだ完全に治療終了してないから戻って」
「いや、あの〜飲み物を買いに行こうかなーと」
「部屋に水差し置いてるよね。それ飲めば問題ないよね」
女性は大剣の柄に手をあてながら悠に笑いながら語りかけるが目が笑っていないのであった。
「わかりました。わかりましたから頼むからその大剣の柄に手をあてるのやめてください。マジで怖いですって瀬奈さん」
「ならベットに戻って」
帝瀬奈はそう言って大剣の柄から手を離すと大剣は一瞬で消滅した。
「全く面倒なことしてくれたね。魔薬の過剰な投与でかなり身体に負担を掛けてそれで更に骨折した上に吐血して」
「すいません瀬奈さんのお手間をとらせてしまって」
悠が申し訳なさそうに瀬奈に謝罪をする。
「まぁいいけどね。けどまた記憶処理用の魔薬を使ったって事は例の症状出たみたいだけど変わりはない感じだった?」
「変わりありませんでした。それと魔薬の効果が落ちた気がします」
「まぁそりゃ日常的に飲んでればおちるでしょ、とりあえずはそのままの薬飲んでね。それとこの後、外川さん来るらしいからそれまでは起きてるように」
そう言って瀬奈は部屋を出て行き入れ替わるように外川が病室に入ってきた。
「取り敢えずはお疲れ様。お前のお陰で早期解決出来たよ」
「そうですか。それは良かったです」
外川に対して興味なさげに悠は返答した。
「それで外川さんがここに来るって事はなんかあったんですか。暇じゃないでしょうに」
「うん、はっきりと言うことにしようか。
君にはグリモワール魔導学園に行ってもらいたい、というか行け」
「随分と急ですね。っていうか何故ですかね」
「まぁな、実はここ最近あの辺りが物騒って話でな。会議した結果、お前を出せって話になった」
「はぁまあ大体わかりました。ですけど他に適任いないんですか?少なくとも月や太陽より自分は劣ります」
「そんな事は知ってる。けどお前に任せる事になった。というかお前が適任だ。講師の資格保ってるし。それと装備品は全て持ってけ。魔導学園は国では1番狙われやすい」
その言葉を聞いて悠は即刻了承した。
「了解しました。これよりNo.13死神は魔導学園へ出向します」
このやりとりの1週間後悠は病院を退院した
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