第2話

「……その心は?」

「奥方は、その……魔女、だと聞いたのだが」

「ああ」

「普遍的な人間が魔術師を相手にするのは……その……大変難しい」

「そうだな」

「奥方は……かのカンプレィで、素晴らしい戦果を挙げた戦乙女ヴァルキュリヤと聞く……だからどうか……」

「……はあ」


 頭を下げられた男は、しぶしぶタバコを点け始めた。


「……それは本人に聞く必要があるが、たぶん過剰戦力だ。あいつの戦争は、歩兵相手のそれじゃない」

「というと」

「……彼女は苛烈だからな。聞くか」

「何を」

「千葉に、戦車連隊があるだろう」

「ああ」

「五両あった。演習で相見えて、五分強で片が付いた」

「それは……」

「全車大破判定だ。分かったろう、過剰戦力だ。帝都が更地になりかねない」

「……それでも」


 乾いた笑みを浮かべながら、男は続けた。


「やつらが間違いなく壊滅するなら、一向に構わん」

「……」

「去年、時計を盗まれた。娘が選んだ品だ。形見だった」

「…………」

「ああそうだ、八つ当たりだ。正直確証も持てん。最後に時計を見た者が、下手人がこの時代の服ではなかったというから、そうしているだけだ」

「……分かったよ、付き合ってやる」

「良いのか」

「時間は掛かるだろうが。やってみるさ」

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深川日記 猫町大五 @zack0913

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