第8話 再開2

・・・

「ぐわぁ、、、」エルは大きく欠伸をした。

ベッドに腰を掛け、上にいるメルンは早起きして本を読んでいた。

「なにしてんの、、」

「、、、黙って寝てろ、おこちゃまは」

ドアから出切る前に足でベットを蹴り、邪魔をしてやる。

外に出たら、まず顔を洗う。井戸水をためた水瓶の水を手ですくい、ばしゃばしゃと洗った。目がパッと覚めたら出発の支度だ。台所の近くを通ると母が魚を焼いていたので、まだ寝ているようにして、外で遊ぶことにした。裏戸からゆっくりと出て、町中へ飛び出す。朝早くから井戸汲みの人たちで賑わっていて、でも霧が音を吸って清閑な空気がした。最近ハマっていることは、魔法。世の中には不思議な力があるらしく、それを操ることのことを言う。ぐっぱと手を動かす、全力疾走する、寝る、かくれんぼをして息を潜める。ある日、体の中を巡る力を想像したり、していた。ちょっとかっこいいことをしてみた。繰り返しているうちに、お肉屋さんの近くにある、街の道場の人に声をかけられてしまったのだ。それからというもの魔法を自覚し、遊んでいるわけである。

 井戸から遠ざかるように走る。周りの景色が次々に過ぎていくのが楽しいのはもう走るのが癖になっている証拠かもしれない。ステップ、回転、右足左足を自由に組み合わせ、つまづきそうにもなる。そうしているうちに森にたどり着いた。鬱蒼と生えている木は過酷な競争が起きている危険なところだと本能に知らせる。が子供には関係のないことだ。勢いそのまま森にもかけいる。森が危険というよりも、横転することのほうが危ない。エルは森に何度も通っているのでもうそれ自体は危なくないのだ。木の枝に捕まり、雲梯をするように枝を渡っていく。とても高いが怖くわない、とても楽しい。ゆっくりゆっくりと慎重に枝をよじり、つかみして進んでいく。木と 木の間をよじり渡ったあとに、地に足をつき、今度は走って進む。木の根っこに躓きそうになるのが、むしろ避けてやるという気を起こさせる。跳ねて、木を支えに乗り越えたりして走り抜ける。しばらくすると、開けて空が見えてきた。おそらく大きく凹んでいて、何者にも遮られていないからだろう。一気に視界が広がる。広がるのは大きな渓谷で、どこまでも続き数百メートルはあろうかというほど、どこまでも深い。

「おおおぉぉぉおおお」

思わずエルは声を上げた。強い風が吹いたら飛びそうなくらい、開放的な空間が現れたのだ。最近で一番の発見といってもいいだろう。エルは嬉しさ半分、怖さ半分で景色を眺めながら崖の端を沿っていく。崖の脇に生える、長く太い水をたくさん蓄えていそうな木やもっこもっこした苔が、そびえ立つ岩の塔の頂上付近に繁茂している。きれいな景色を眺めるとこれ以上探検できないことを悔しく思うけど魔法ができたらと夢が広がった。今は北に向かっている。

「北にはあのドラゴンがいるのかなぁ」

崖を眺め、考えているとその時、

巨大な渓谷の向こうに崖があるだけで、山はむしろ隠されていた。巨大なゴツゴツした丘が無造作に造形した山が姿をあらわにし始めた。エルはドキッとした。さらに見覚えのある姿が目に写ったから。そうそれはあのドラゴンだった。

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