ようお越しやす【1分で読める創作小説2025】
オカン🐷
第1話
人工透析を受けている病院で心電図の検査を受けていた。
すると検査技師さんの机上の電話機が鳴った。
「すみません」
と言って受話器を取った。
「この暑さでしょ。患者さんに抵抗がなければ冷凍庫で凍らせて持って来るのが一番いいんですけどね」
いったい何を凍らせて持って来ると言うのだろう?
電話を切った検査技師さんが話しかけてきた。
「今の電話ね、栄養指導に通う姫路の患者さんなんやけど、検査用の尿を持って来る方法を訊かれて。遠い所からご苦労さんなことやわ。さっさと透析してしまえばええのに」
「姫路から来はるんですか? あちらに病院はないんですか?」
腎臓が悪くなると蛋白、カリウムが体外に排泄できなくなる。
月に一度蓄尿してその一部をここの病院へ持って来て検査をしてもらう。
そのとき暑さで変質しないよに持ち運ぶのために、冷凍庫で尿を凍らせて持って来るというわけだ。
冷凍庫ねえ。食料品を入れる所に入れるの?
抵抗があってもそうせなしゃあないんやったら、しゃあないかな。
1日に食べられる量が決められていて体格や体重にあわせた栄養指導を受ける。
これを実施している病院は全国でも珍しいそうだ。
だから遠方から来る患者さんも少なくない。
透析をする病院は結構な数あるというのに、透析にならないために頑張っているんや。
透析を導入する前に、この栄養指導を4年間受けていた。
検査の前日、友人と尾道に出かけていた。
「何だ、この数値は、いったい何を食べたんや?」
尿検査の結果を見て医院長が目を剥く。
「ちょっと旅行しててランチにカツレツをモニョモニョ」
医院長の呆れ顔。先生は肉を一切食べないのだそう。
焼肉美味しいのになあ。
そのあとの栄養指導で栄養指導士さん曰く
「そういうときはチャーハンを頼んで半分残すんです」
食べること大好きやのに残すなんてことできるやろか。
1日に食べられる量が決まっていて一番厳しいのが蛋白。
ご飯にまで蛋白があるというので低蛋白のご飯やパン、焼きそばを取り寄せた。
ああ、塩分、水分、カリウムにも注意がいるんだった。
透析をしている今は何を食べてもいい。透析で悪いものが排出されるから。
あの頃は身体に毒素が貯まると吐き気がしてトイレに駆け込んでいた。
辛かったなあ。
確かにね技師さんの言わはるように、さっさと透析をしてしまえば姫路くんだりから出て来る必要もなくなるのだ。
かと言って透析は週に3日、3~4時間拘束され盆も正月もない。
どっちゃにしても難儀なことですわ。
【了】
ようお越しやす【1分で読める創作小説2025】 オカン🐷 @magarikado
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
働かないえりぞ/えりぞ
★90 エッセイ・ノンフィクション 連載中 49話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます