全ては幻から

@naokool

あの感覚はどこから?

彼の名はツカサ

小学校の低学年から

一緒のクラスになったルミという

女の子がいて

教室での席が隣同士ということから仲良くなり、ツカサとルミは一緒に帰る事も

ほぼ、毎日だった。

ルミの両親は共働きで、当時言われ始めた

いわゆる鍵っ子だった。

ツカサはルミを送り届けながら

ルミの親が帰って来るのを

宿題などしながら楽しく過ごした。


学年が上がる前の春休み

ツカサは風邪をこじらせ

病院に緊急入院したのだった。

体力も落ち、意識も薄れ

どのくらい眠ったのだろうか・・・?


ツカサの母親の話では

約2日 点滴をしたまま寝ていたようだ


ツカサは、ふと・・・

ルミの事を思い浮かべた

時間が経っても、ハッキリした記憶に


春休みの間

自宅療養が必要で

ルミとは何の約束もしないまま

会えていなかった

春休みがもう少しで終わる頃

体力の回復したツカサはたまらず

自転車に乗りルミの家へと向かっていた


「確かこの建物だったよなぁ・・・」




???

しかし、どうしたことか

団地のどこを探しても

ルミの名字である「田山」がない


「風邪ひいて頭おかしくなったのかなぁ?」

ツカサは何がなんだか分からなかった。

何度見渡しても団地の中に

「田山」らしきものはない


説明も出来なかったが

トボトボと自宅へ戻る途中

同級生のシンジに会った

シンジはルミと同じ団地に住んでいたから

ツカサは挨拶もそこそこに

「シンジ君、ルミのこと見なかった?」

と聞いた。

シンジは信じられない言葉を口にした




「はぁ?誰それ・・・」


ツカサは目が点になった

「えっ?僕たちのクラスに居た

女の子で田山 ルミって子だよ」

しかしシンジから返って来た答えは同じ

「知らない」ということだけ。

ツカサは益々、混乱した

4月始業式の日

ツカサは3年の頃同級生だった仲間に

くまなくルミの事を聞いて回ったが

返って来る返事はシンジと同じだった。


ツカサは途方に暮れた。

あんなに長い間一緒に居たのに

誰も知らないなんてあり得ないと思った。

みんなして自分を騙しているんじゃないかと

思うほどに。


そして、それが大人になった今でも

解決に至っていないことも

時々、思い返すと話したのだった。


まわりで聞いていた同僚たちは

食い入るように耳を傾け

気味の悪い話だとは思っていないようだ。

ツカサ自身も

怖さなどは感じていなかったし

不思議なことがあるもんだ・・・と

それについての深掘りもしていない。



あの奇妙な・・・そして

穏やかな日々は何だったのか?

知りたいが、知る術がない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

全ては幻から @naokool

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ