浸食

 私は今、笑顔を浮かべられているだろうか?

 私は君に、優しく接しているだろうか?


 人付き合いに自信なんてない。

 君にも嫌われてしまうかもと考えてしまう。


 前向きに生きられたら、どんなに楽だろう。

 悲しいけれど、そんなことはできないんだ。


 どうしても、どうしても無理なんだ。

 幸せを感じるほど、崩れていく可能性を探してしまう。


 悪い未来を感じるほど、どこか安堵する私がいる。

 私は幸せになれないんだと別の私が繰り返す。



 生まれてすぐに、私は死にかけた。

 偶然居合わせた医師により、私は救われた。

 でもそのことが私の救いになったのか、今はわからない。


 子どもの頃は親に愛されていると思っていた。

 末っ子の私のことを優先してくれている気がしたから。

 私にはそれが罠だと気付けなかった。



 気付いたときには、もう自由はなかった。

 発言権を奪われ、お金を奪われ、意思を奪われた。


 なんとか抜け出そうとしたけど、だめだった。

 周りは『良い親』としか見ていなかった。


 そのころの私は、人の顔色を見ることしかできなかった。

 自分の考えを持つことに罪悪感を感じていた。


 親を助けることが正義だと信じていた。

 自分を犠牲にすればいいのだと信じていた。



 一人の友との出会いが私に意思をくれた。

 私は人を愛することを覚えた。

 そして、友を信じた結果、裏切られた。


 私の愛は届かず、違う人の元へ去っていった。

『あなたは悪くないの』と泣きながら言われた。

 それがかえって、私を深く傷つけた。


 私は今、笑顔を浮かべられているだろうか?

 私は君に、優しく接しているだろうか?


 私を救う何かに出会えた今を守りたい。

 好かれなくてもいいから、存在を認めてほしい。


 もう、傷つくことをおそれたくない。

 もう、自分の存在を諦めたくはない。


 傷口が開き血を流すことにはもう慣れたから。

 どうか暗い過去が、私をこれ以上浸食しないでほしい。



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