逆さまの虹
子どもの頃、虹のふもとには宝物が埋まっているって言われたことがある。
虹がかかるたび、私は一生懸命走って虹のふもとを目指したけど、たどり着けた試しはない。
それもそうだ、虹は空気中の水分によって太陽光が屈折して起きる現象で、魔法なんかじゃないから。
サンタさんがパパだったと気付いたときもショックだったけど、気付かないふりして喜んだっけ。
お酒臭いサンタさんは、次の年から現れなくなったな。
そうやって、少しずつ世の中の仕組みを知って、大人になって、夢のようなことは考えなくなっていったけど、私が親になって子どもと話すようになると、子どもの頃のように無邪気な夢のような話をするようになった。
「おかあさん、どうして虹はかかるの?」
「雨が止んだよって太陽の妖精さんが教えてくれるために虹の橋をかけてやってくるからだよ」
私は子どもの頃に考えた虹の魔法について娘に教えてあげた。
「妖精さんに会ってみたい!」
私の娘だけあって、夢のような話が好きなのはそっくりだ。
「そうだね。虹のふもとには宝物が埋まってるから、今度お母さんと妖精さんを探して、ついでに宝探しもしようね」
ニコニコと笑う娘の手は小さく、とても温かい。
子どもこそが、魔法で生まれた宝物のように私には感じられた。
「おかあさん、逆さまの虹だとどうなるの?」
そう言って空を指差した娘の指先を目で追ってみると、太陽の近くに、Uの字のような逆さまの虹がかかっていた。
初めて見る虹に、私は夢見心地になった。
「逆さまの虹は、幸せになれる雨を降らせてくれる印なんだよ」
「幸せになれる雨?」
「そうよ、幸せの雨が降ると、たくさんお野菜とかお米とか育って、みんな幸せになれるんだよ」
私がそれっぽいことを言うと、娘は飛んで喜んだ。
最近買ったお気に入りの雨合羽を着られることが嬉しいようだ。
「おかあさん、虹好き?」
「もちろん! 普通の虹も、逆さまの虹も大好きだよ! 夜にかかる虹もね!」
「夜の虹?」
「そうだよ。夜にかかる虹は、夢の世界を運んでくれるんだよ。めったに見られないけど、見られたら夢が叶うんだよ」
「うわぁ、見てみたい!」
「いいこにしていたら見られるからね」
娘の反応が可愛くて、つい、でまかせのようなことを言ってしまった私。
でも、本当に夜に虹がかかるなら、それを見られたなら、きっと夢が叶うに違いない。
逆さまの虹を娘と眺めながら、私は子どもの頃のような夢を見て、娘の幸せを願った。
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