宇宙と天使みたいな無駄
あなたは宇宙のことを知っているか?と聞けばほとんどの人が完全には知らないと答えるだろう。なのに、人々が知った気になる宇宙があるらしい。今回はそんな話と、その宇宙に優しくしようとした人のお話。
他者とは宇宙である。と言えばよくわからないと思う人が多いだろう。その人の分だけ、私は悩まされているのだ。他人のことを理解できると思うことはすごく希望に満ち溢れたことだ。なぜなら私のことも理解してもらえるかもしれないから、ひとりぼっちじゃないと感じられるから。わたしから言わせてみれば反吐が出る。他者の他者性を見て見ぬふりをする人、そもそもそれに気づかない人、どちらもどうかしてると思う。他者とは絶対に理解しきれないものだ。だから他者は他者なのだ。その前提を捨てる人があまりにも多い。それと同じくらい、客観視をできると思っている人の多さにも辟易とする。あなたたちが客観と呼んでいるものは主観のフィルターを通して見た客観に過ぎないんですよ、と今すぐにでも伝えてあげたい。他人の考えてることが、すべてわかる人など何処にもいないのに、なんでその人のことを知っているなんて言えるのだろう。私にはわからない。感情的に書き殴ったが、それだけ私ももう限界なのだ。あまりにも容易く人を切り裂く人たちに囲まれて、私も正気じゃいられない。
他者とは不可知性の塊みたいなものだ。私たちは他者の考えていることが何一つわからない。それ故にこの世界の全てを知ろうと思っても他者がいるせいで、その願いは叶わない。これを読んでいる人の中やその周りに、他者の考えていることが何一つわからないのは嘘だと思う人もいるかもしれない。だけれどそれだけは否定できる。あなたがわかっていると思うそれは推測でしかない。答えを知っているわけではない。数学のように数式から答えを導き出したわけではない。歴史のように経験則から答えを推測しただけだ。私はこれを読んでいるあなたが私のことが好きで私のことを知りたくて読んでいるのか、それとも私のことが嫌いで弱みを探したくて読んでいるのかわからない。他者とは宇宙のようなものなのだ。それ即ち私たち自身も宇宙である。これをわかっていない人が多すぎる。なんて私も書きたかった。だが他者はわからない。わかった上でそうしていないのかわからなくてそうしているのかの差は私たちの主観でしかない。こんなことを論じることも他者の前では馬鹿らしい行為の一つでしかない。それを重々承知の上で書いている。もう私は天使になるのを少し諦めているからだ。
世の中には他者のことを決めつける人がたくさんいる。無職に向かって「頑張っていない」と、不登校に向かって「頑張っていない」と言う人がたくさんいる。そんなことをしても自らの努力は何も変わりはしないのに不思議なものだ。そんなことを言う私も昔はそうだった。それらの人は頑張っていないのだと思った。だが今それらの人になってやっとわかった。そうじゃない人もいるんだと。何も頑張ってるけど報われてない人がいるなんて話はしようとは思わない。ただ、他者のことなんて何一つ分かりはしないのだから、他者にとっての努力が、自らにとっての怠惰である可能性があるというだけの話である。自らの主観を疑わない人は、他人を決めつけることに何一つ抵抗がない。私にとって努力をしていなければ、その人は怠惰な人になるし、どれだけ怠惰な人でもその人にとって努力しているように見えたら努力していることになる。なんて愚かなんだろう。一つの銀河を宇宙の全てだと疑わない人のように感じる。その人がどんな経緯でどんな覚悟を持ってどんな熱量でどんな思想でその人生を生きているかわからないのに、軽々しくその人の人生について論じるのはさぞ楽しいだろう。今この文章を書いていてとても私の気分がいいように。「目標に定められた数字まで到達していない」ならいいものを、「努力していない」などと言うから足元を掬われる。
優しさを履き違えている人もいる。あたかも自分が他者の気持ちを感じたように思う人だ。「自らに落とし込まないと他人の気持ちがわからないなんて」などとほざくツイートを見たことがあるが、今も頭の中に鮮明に残るぐらいには馬鹿馬鹿しく感じてしまう。降霊術でも使えるのかと、あまりにも面白すぎる。自らが他者になれるなどと、客観的に他者の気持ちを感じられるなどという烏滸がましい思想は、私とは相容れない。優しくありたいのなら、人に悩みを相談されて、言っていい言葉は「そうだね」だけである。なぜなら、その人の気持ちを理解することなど私たちは微塵も叶わないからだ。ただ肯定すること、それが他者を知らない私たちに残された方法である。何か意見を述べたければあくまで「私だったら」というスタンスを崩さずに慎重に述べるしかない。間違っても他者の気持ちをわかった気になって、話したこと以上のことを推測して「こういう気持ちで辛いよね」なんて言うべきじゃない。その人の痛みは、その人にしかわからないのだから。同じだけの骨折という痛みでも、耐えられる人と耐えられない人がいるのだから。痛みを比べることも他者の不可知性の前では無駄なのだ。そうだというのに、その程度の苦しみでなんて他者と比べる人がいて辟易とする。内閣風に言うのなら、最も強い言葉で非難したい気分だ。
といったように、他者とは宇宙であり不可知性の塊である。そんな他者のことを知った気になることは馬鹿らしい行為だし、他者と自分や他者と他者を比べることなどもってのほかであるということが伝わってくれたら嬉しい。ここからは今から言ってきたことを捨てて悪魔を志すか悩んでいる私の話をしよう。
私も昔は他者のことをわかると思っていた。正確に言うなら、他者のことをわからないとは思っていなかった。だから平気な顔をして他者と自分を比べて、「この人は努力していない」だの「この人は他人の気持ちがわからない」だの思っていた。だがそんな私にも転機が訪れた。大きい一つの転機というよりかは小さな、しかし重要な転機が何度か。それを通して、私は人の気持ちがわからないことやそもそもわかりようがないことを学んだ。それから私は人に自我というものを出さなくなった。というか、出せなくなった。人が私に厳しい物言いをしたとしても、もしかしたら私に対する善意で行動してくれただけかもしれないし、私にとっての不快な行動にも何か意味があって私がそれに気づけていないだけかもしれないから、私はできる限り我慢することにした。言うだけ不毛だからだ。他者軸で何かを考えるのもやめた。私が嫌だから、私がそう思うからで行動することにした(まぁその私には他者や社会の目が...という話は三話目をお読みください)そうして、優しさも変えていこうと思った。前までは他者を理解して共感することが優しさだと思っていたけれど、本当は他者を理解しようとして、求められた時だけ私の主観の中で共感することが本当の優しさなんだと感じた。そうして私は天使みたいに優しくあろうとした。他者という宇宙に、私がモもてるできる限りを尽くそうとした。空を飛ぼうとした。だが現実は悲痛だった。人は私に「考えずぎ」「そんなに考えずに」などという言葉を投げかけてきた。思考停止しろと、私にはそう聞こえた。私が天使になろうとしても、周りもそうだとは決して限らない。遠慮なく飛ぼうとする私の羽を切られた。私はどうやら努力していないらしい。他者からしたら努力してないように見えるほど私の努力が少なかったんだと内省もするが、それ以上にやるせない怒りが湧いてきた。私は私なりに、私なりの考えで努力をしてきたつもりだったからその分やるせなかった。まだ「結果が出せていない」の方がよかった。それに、私から見ていて他者のことを理解できると思っているような人があまりにも多くて、なんだか馬鹿らしくなってきた。私だけが空を飛ぼうとしてる中でみんなはそれを見て笑っている気がした。それに、単純に疲れる。他者の考えを決して切り捨てられなくなって、すべてを自分の中で折り合いをつけて納得して、優しくあるために色々と考えながら行動することは、未熟者の私にとってはあまりにも難のある行為だった。CPU使用率が90%を超えているのに、他者のことで慎重になって使用率が98%にでもなったらそれこそふざけた話しかできなくなる。それに、全ての意見を肯定することでもあるから、非常にストレスが溜まる。私はこうは思わない意見の、そう思うであろう場所を探さないといけないのが大変だ。だから私は悪魔に堕ちようか悩んでいる。言いたいことを言いたいだけ言ってしまうような、そんな悪魔に。少なくとも今の私はなりたくない。だけれど、未来の私がそうなってないとはわからないから、ぜひ未来の私のこれを読むときが来るのならこれを読んで正気を取り戻してほしい。
疲労にストレス。それらの影響で翼は翼でも下に潜るための翼が生えてきてしまいそうだ。他者という宇宙をわかった気にならずに優しくあろうとしてもあまりにも難しいので、これから私は頑張って貫き通していたい。私だけでも優しくあるように。だが、人によってはそれは日和見主義に映るらしい。ただ他人のことがわからないという前提で、他人との空白を大事にしているだけなのに。はっきりとものを言えない臆病な人間になるらしい。なんとも無常だ。空なんて飛ばなくても、いいのかもしれない。というか、私に空を飛ぶのは早かったのかもしれない。
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