「構いませんよ」

 お姉さん目尻が吊り上がって恐いんだけど…。


「ホントに意地悪な男の子だね!、何処も怪我して無いわよ!」

 ٩(๑`^´๑)۶

「素直な方だと思うんだけどな…、其れで小林さんもう少しXTに乗って見ます?」

「今日はコレで充分よ、ありがとう」

 答えては呉れたけど顔を上げて呉れない、やっぱり転んだのがショックだったのかな?、悪い思いを払拭出来れば良いんだけど…。


「其れじゃバイクを荷物の所迄戻しますけど後ろに乗って行きます?、それとも歩きます?」

「乗せて貰えるの?」

「大した距離じあゃ無いですけど歩くよりは早いでしょ?」

「ハイッ♥」

 元気な返答が返って来る、顔は上げて呉れたが目線はXTへ向けられて何とも言えない横顔、沈んだ表情とは違ってるが何と喩えれば良いのだろうか、XTをとおして何処かとお場所ところを見ているのかも知れないな…。


「それじゃ乗って下さい!」

「うん、肩借りるね!」

 俺の肩に手を載せスイングアームに付いたステップに足を掛けスムーズにピリオンシートに座る、YAMAHAのオフ車はフレームじゃ無くスイングアームにタンデムステップが有る、なのに乗り込む動作に淀みが無く乗り慣れた者が行う所作。

 そうか此の女性ひとは何時も後ろに乗せて貰っていたと言う事なんだな…、此の女性に乗せて貰える程の仲のXT乗りが居たのだと漸く理解した。


「出しますよ?」

「ハイッ」

 答えると肩に置かれた腕を胴に廻し、廻された腕に優しく力が込められる、久し振りの背に感じる役得感、結構スタイルの良い方なのだからだが…。


 ゆっくり走り出すと廻された腕に少し力加減が増す、此の腕に込められた感じはアレだな…、最後にタンデムした時と同じだ。今迄の会話の中から思い付くのは此れと同型のXTに乗るライダーが居た事、其れもかなり親しい間柄多分彼氏?、「家庭を持つと…」とも言ってた訳だからそのライダーって多分旦那さんの事だろ?、それが懐かしいなら解るのだが何であんな悲しそうに見える顔をしてたのか?、理由わけの判らん事ばかりだな…。


「ありがとう♥」

 僅かなタンデムが終了し降ろした時に礼を言われるが、俺に背を向け降りたシートに手を触れ見詰めてる。

「こんな事で良ければ何時でも声掛けて貰えば良いですよ!」

「そうなの?、またお願いしても良いのかな?」

 返って来た声は明るいトーンに変わって居たが、それまでシートに触れていた手の甲でそっと顔を拭う、其の仕草を何時かと同じく見なかった事にする。

「構いませんよ」


 元居た場所に腰掛けると同じように隣に座る、視線の先にはXT、顔を見られたくなくてそうしたのかホントにXTを見て居たのかは判らないが。

「次は何時来るんです?」

「そうですねなるべく走りに来たいとは思ってますが天気と仕事次第ですかね?」

「そう言えば仕事って郵便屋さんなの?」

「はいっ?」

「仕事でバイクに乗るって言ってたでしょ?」

「確かに言いましたけど違いますよ」

「違うのか…、後バイクに乗る仕事なら新聞屋さんなの?」

 バイクに乗るって言った事覚えてるんだ、前に来てから結構時間が経ってるんだけどね。

「新聞屋さんか…、まぁ確かにしてますね!」

?、平たく?、それってどう言う意味?」

 (・へ・)???

「其の侭ですが?」

「何で教えて呉れないのよ!」

 ٩(๑`^´๑)۶

「謎は有った方が面白いじゃ無いですか、当てて貰えるか楽しみだし、先生だって同じですよ?」

「あたしが?、何にも隠して無いよ?」

「其れじゃ何で俺に構うんです?」

「其れは…」

「其れは?」

「…アレに乗ってるから」

「あれってXTの事ですよね?」

「他に何が有るって言うの?」

「そうですよね…」

 判っちゃ居ましたけどね…、乞うもハッキリ言われると地味に傷付くけど、まぁ他所様のモノに手を出す程馬鹿じゃ無いし、それが出来る度胸が在る位なら…、臆病者絹漉豆腐じゃ無けりゃ今の俺は独り者じゃ無い筈だしね。


 今日は脈無しってはっきり判った事が収穫だ!、此れでモヤモヤしなくて済むから良しだよね。

 (о´∀`о)


「其れじゃ走って来ますね!」

 コースに復帰しその後は何時も通りのルーティン、5回廻ってチェックしてを繰り返すが二回目で腕と脚がパンパン、暫く通って無かった弊害ツケが出てる、これ以上は明日の仕事に支障が出るしな。

 未だ陽は高いけど本日は切り上げて帰る事にしようかな!。


 最後の一周を終えて荷物の場所へ戻り拡げた店を片付け始めると…。

「もう帰っちゃうの?」

 何時の間にか堤防の上から降りてらっしゃる。

「暫く来なかったんでこれ以上続けると筋肉痛で仕事に支障出ますから切り上げます」

「そうなんだ…」

「えぇ」

「其れじゃお願いしても良い?」

「何ですか?」

「あそこ迄送ってくれる?」

 ☝️(・∀・)

 指先は堤防の上に停るCBを指してるんだけど?


「えっ?、歩いた方が早いでしょ?」

 此の広場見たいな所の反対側の端から堤防の坂を上がってUターン、其れで此の上迄戻って来るんだよ?、擁壁を登れば二十秒と掛からないし、何時も其処を昇り降りしてるのに何で?。


「乗せて呉れないの?、さっき何時でも良いって言って無かったっけ?」

「構わないですけれど…、それじゃ荷物積む間待ってて貰えます?」

「うん、待ってる♥」

 だからその♥は何なんなの?、さて乗せるなら荷物何処に積もうかな…。


 そんな事を考えていた…。

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