何処ですか?

 差し出されたおにぎりを受け取り一寸考えてしまう、何でこんなにも構ってくるんだろう?


「もう〜森田くんてば、ホラホラ先生は恐く無いからね〜、先生の言う事聞いてね〜♥」

「それは判ってますけどね…」

「なら何で食べてくれないの?」

「いや頂きますけど何でそんなに俺に構うんです?、何か小林さんにメリットが有ります?」

「言ったじゃ無いXT見せて貰うのと、後今日は乗せて貰えるんでしょ?」

「まぁ元はと言えば俺が言い出した事ですし、其れ位構いませんけど?」

「其れだけよ!」

「そうですか…、なら頂きますね」

「ハイ召し上がれ!」

 その間もずっと視線はXTを見てる、よく解らんがXTにそこまでの思い入れが有るんだろうか?、前回来た時に俯いてたけど此方を向く時には笑って振り向いたから知られたく無い事だろうし、本人が何も言わないって事はあんまり深入りしないのが吉だよね。


「ご馳走様でした!」

 頂いた塩の効いたシャケのおにぎりを平らげ御礼を伝える。

「おいしかった?」

「ええ、有難う御座います」

「それじゃ、はいコレ♥」

 何故か次が出て来る、如何言う事?

「厭々メロンパンの代わりでしょ?、一つで十分ですよ!」

「それじゃあたしが困るんだけど?」

「困るって?、小林さんのお昼ご飯でしょ?」

「ホラッ♥」

 手に持ち見せられる小さなバスケット、中には未だ三つおにぎりが収まってる合計五って事?、見かけに寄らずこんなに食べるの此の人?。


「遠慮しないでね!」

 と強引におにぎりを手渡され受け取って仕舞う。

「はぁ…」

「食べてもらわないと困るのよね〜、晩御飯もコレに為るから」

「どう言う意味です?」

「言葉の侭だよ、其れじやあたしも頂こうかな!」

 バスケットから一つ取り出し口に運ぶ、前にこんな事が在ったよな…。


 まさかね…。


 二個目を平らげると更にもう一つ手渡される、因みに二つ目はおかか、之は椀子蕎麦状態、前回もこんな状態だったよな、まさか本当に爆弾発言って事は無いよな…。


 空は日本晴れなのに精神的には雲行きが怪しい、戦々恐々としてた。


「ごちそうさまでした!」

 釣られて…。

「有難う御座いました、ご馳走様です!」

 言わないで済む訳無いよね。


「ねぇまた見せて貰っても良いかな?」

「暫く食休みしてますからごゆっくりどうぞ。」

 流石にあんパンとおにぎり三つで腹がパンパン、直ぐには動けません、擁壁に背を預けて眼を閉じる、ポカポカ暖かく今日は此の儘昼寝しても良いかななんて思い始める。


「森田くんソロソロ起きて貰っても良いかな?」

 もう他のライダー達はコースを走り始めてる、熟睡してた見たいで起こされて仕舞う、情けない処見られたな…。

「すいません今起きます!」

「ねぇ乗って見ても良い?」

「そうでしたね、良いですけど乗り方は…、そうかCB乗ってますもんね乗り方は同じですよ!」

(・∀・)

「そう?、難しく無いかな?」

(¯―¯٥)

「凄く乗り易いから初めてでも大丈夫ですよ!」

(^o^)v

 デコンプ付いてるとは言えエンジン掛けられるかは怪しい、取り敢えずエンジンを始動し乗れる様にして手招きする。


「コレで直ぐに走れますよ」

「判った乗せて貰うね♥」

 そう言うとXTに跨がるのだけど女性には一寸厳しいか?、フルサイズで足着き性など無いに等しく、彼女は小柄じゃ無いけれど俺と違ってサスも゙殆ど沈まない、片足の半分程が地面に届く位。


 大丈夫かな…

 (。・_・。)…


 まぁ走り出しちゃえば問題無いよね。


 コース手前の広場見たいな所をくるくる廻ってる、トコトコ走ってもエンジンが粘って呉れるから問題無く走れてる、乗ってる小林さんも嬉しそうに笑ってる。


 何でXTに拘ってるのかは未だに判らんし、この間の俯いてたのも謎の侭、何なんだろうな…。


 考え事をしていたら一番奥で停まって手を降ってる、気付いた俺も手を振り返し其れを確認して走り出そうとした見たいだが…。


「あっ!」

 (・・;)!

 立ち転けした。


 眼にした俺は駆け出していた、必死に車体を起こそうとしてるが足元が悪くて中々起こせない、堪らず声を上げる。


「其の侭で良いです、今行きますから其の侭で!」

 声が届いたのだろう小さく頷き立ち上がるが、XTの脇で俯いてしまってる。


「怪我してませんか?」

「怪我はないけどごめんなさい…」

「なら良かった、気にする事無いですよ」

「壊れたり傷に為ってませんか?弁償しますんで」

「気にする必要無いですよ!」

 (^o^)v

「でも…、ちゃんと言って下さいね」

 気にする事無いんだけどな…。


 一旦バイクを起こして見ても立ち転けだから走行に支障に為るような物は勿論全く無し!

「ねぇハッキリ言って貰えますか!」

「何とも無いですよ」

「ちゃんと言って!」

 参ったな元々傷だらけでその上俺が散々転んでるから何も気にする事無いのにな…、ならば…。


「分かりました!」

「ハッキリ言って?」

「其れじや小林さんが転んだ時の傷は何処ですか?、其処を直します!」

「エッ?」

「さぁどれですか?」

 判る訳無いよな元々傷だらけなんだし…。

 (ΦωΦ)フフフ…


「……分かんないよ…」

「そうでしょ?」

「ホントに意地悪!」

「元々傷だらけで俺もまた転ぶからまだまだ傷は増えると思います、だから気にしなくて良いですよ、それより転倒で怪我して無いですか?」

「ホントに意地悪な男の子だね!、何処も怪我して無いわよ!」

 ٩(๑`^´๑)۶

「素直な方だと思うけどな…、其れで小林さんもう少しXTに乗って見ます?」


 転んだ侭だと嫌な思いが残るだろうし、ならば良い思いを持って帰って欲しいよね…。


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