坂の上に有るコンビニ、実はバイクで来るより歩いて来る方が早いのだ、俺が住んでる借家の前に有る崖の様な階段を昇り切った真ん前に有る。バイクで迂回するとぐるっと廻り込んで約1キロ、然も信号も途中に存在する、だが歩いて階段を上れば約40メートル、一分も掛からず到着する。

　バイト後にバイクを探しに出かける為に当時はRZで通って居たが、夜遅いので徒歩で晩飯を調達に来たらこのトラブルに巻き込まれてしまう。

「やだ、やだ、やだ…」

　と小さな声で繰り返してる、此の子は親と喧嘩でもして家を飛び出して来たのか？。

「どうしたものか？」

　とは言っても此の侭店の前に放置する訳にも行かんし、此の子の親だって心配して探してんだろうし…、あゝ頭が痛い！。

　何とか説得して無事に家に帰って貰わないと…。

　そうなると此処で立ち話でもとは行かないよな、何処か場所を変えるのが良いよな。あそこならこの時間でもこの娘と同じ歳位の連中が学校帰りに立ち寄るし、飯喰って長話してるから大丈夫だろう…。

「話は聞くから何処で飯でも食うか？」

　馬鹿の一つ覚えみたいだな俺…、小さく頷き立ち上がるとまたしても小柄な娘だ。

　＜如何してこんなトラブルが俺の周りにやって来るんだ？。あの時に逃がした魚は大（デカ）かったと言う事なんだろうな…。後悔先に立たずとは先人はホントに上手い事を言ったもんだ＞

　如何して次々とトラブルがやって来る？、前世の行いが悪くて今世で俺は徳を積まされて居るのだろうか？

「ファミレスで良いか？」

　頷いたが悪怯れる事なく返答が返って来る。

「どこにファミレスが在るの？」

　聞かれて例の場所のファミレスを伝える、何処に連れて行かれるか判らんと不安だろうしな。

「競馬場の近くのファミレスで良いか？」

「どうやって行くの？車？」

　生憎車は持ってない首を振った。

「バイクじゃ嫌か？」

「バイクッ！」

　今眼が光った気がしたが気のせいか？。

「行く、行く、乗せて、乗せて‼」

　ホントに大丈夫か此奴？、見知らぬ奴の後に乗るんだぞ？

「なら今バイク取って来るから、大人しく中で待ってろ！」

　外で待たせて(PC)に見つかったら事だしな。

「わかった‼」

　ずいぶん素直だな此奴、何か不気味なんだが？。

「ちょっと中で待たせておいてくれ！」

　バイトの子に伝えてバイクを取りに行ったんだが…、戻って来たら頗る機嫌は悪かった。

「待たせたな！」

　声を掛けるが、XTで戻ると打って変わって機嫌が悪かった。

「如何した、居ない間に何か有ったのか？」

　バイトの子に聞いて見るが、俺が戻って来る直前までは機嫌は良かった見たいだが…。

愚図愚図してても時間が勿体ない、此奴の機嫌の良し悪しは後回し、薄手のジャケットを渡す。

「何でHONDAなの？YAMAHAじゃ無いの？」

　そう聞いて来たのだが、今聞く事は其処か？、其れには答えず。

「制服の儘じゃ流石に不味いだろ、さっさと上に羽織れ！」

　渡したのはトリコロール柄のジャケット、メット被らせ乗るように促したら拍子抜けするほどあっさりと従って乗り込む、スカートも気にせず跨り裾を尻の下に入れる。

　＜此奴乗り慣れてやがるな…＞

「じゃあ行くぞ？」

　頷き手を回して来たが背中に役得感は伝わって来無い。

「もっと飛ばせ！」

　走り出すと後から大声で叫んでいるが、素性も判らぬ初対面の娘を乗せて出せる筈も無い、指示速度プラスα位でノンビリ走っている、勿論知らない子の責任は取れませんからね…。ただ交差点でオフ車独特の深いバンクを取る右左折の時には流石に怖かったのか必死にしがみ付いて来た。

　＜さて、此奴には何が有るんかな？＞

　走りながら考えて居た、コレで訳あり3人目になるのか？。

　＜何で俺を狙った様にトラブルが舞い込んで来るのか？俺はそんなに前世で悪い事をしたのか？＞

　背中で何かを叫んでいた様だが到着するまでそんな事を考えてた俺の耳には届かなかった。

　それで例のファミレスに到着したのだが今回は余り良い状況では無い…、夜学の帰りに立寄った連中が２グループも在籍してる、何方の中にも見知った顔が有る…。

　幸い店内はガラガラで連中から一番遠い席を選び案内される、RZとΓは連中も知って居るがXTは知らない筈、ＸＴで此処に来て正解だった。

　腹減ってるかと聞くと朝から食事取って無いと言う、先ずは食事にしよう話しは其れからだ。

　オーダーを取りに来たのは何時もの女給さん、今迄と違い目尻を吊り上げて立って居る。此奴は金も持たず家を飛び出て来た様で…。

「飯は奢ってやる」

　と言ったら全く無遠慮に頼みやがる、其の図々しさに呆れてしまう。

　オーダーした物が届くと余程腹を減らしてたのだろう、気持ち良い位皿の上から消えて行く。

平らげた後に珈琲とカフェオレを追加オーダーし運ばれて来たのだが。

「ごゆっくりどうぞ！」

　去って行った何時もの女給さんは…、此奴また違う女連れてやがるのか！と頬を引き攣らせ、此方を見る眼は笑って居なかった、何故か毎回やって来るのは同じお姉さんなんだよな。

　眼の前の娘が腹が膨れ眠くなる前に話をと思っていたのだが開口一発目に…。

「バイクはオンロード、絶対‼」

　全く場所を辨えず大声出す眼の前に居る女子高生。

　本当にトラブルに巻き込まれてばっかりだな俺、一体前世でどんな悪行を重ねて来たんだよ…？