第48話 リリ、竜と契約する
大きな、大きな声が聞こえてきたの。 最初は、ただの魔物の声だと思ったけど、なんだか違う。 悲しくて、苦しそうな声だったんだ。
フローラちゃんが「リリ様、おやめください!」って私の手を掴んだり、ミーナちゃんが「リリちゃん、ダメだよ!」って止めてくれたけど、私にはわかったの。 「違うの、ミーナちゃん……。あの子、苦しんでる……。とっても悲しい声なの……」って。
フローラちゃんの手をそっと振り払って、森の奥へと歩き出したんだ。リルも一緒にいてくれて、私の進む道を守ってくれたんだよ。 システィナさんの「リリ様を追いますよ!」っていう声が聞こえて、みんながついてきてくれたけど、どんどん魔力の圧力が強くなって、辺りの木も地面もひどいことになっていた。
開けた場所に出たとき、みんなが息を飲んだのがわかった。 そこにいたのは、伝説の、巨大な竜だったんだ。
でも、暴れてなんかいなかった。体には、たくさんの深い傷があって、苦しそうに呻き声を上げていたの。すごく強そうなのに、どこか寂しそうで、弱々しく見えた。 「あぁ……やっぱり……」 私、ゆっくりと竜に向かって歩き始めた。
ゴードンさんが「リリ! 危険だ! 戻れ!」って叫んだけど、私は止まらなかった。 「生活魔法、痛いの痛いの飛んでいけ〜!」 そう唱えて、竜の大きな傷に手をかざした。私の手から出た光が、傷を優しく包み込んで、ゆっくりと治していく。
竜は、突然の痛みのない温かさに、戸惑ったみたいに私を見つめた。 「痛いの、痛いの、飛んでいけ……。もう、大丈夫だよ」 小さな子に話しかけるみたいに、優しく声をかけた。
「グルルル……」って、警戒しながらも、私の言葉と魔法に、だんだん心を許してくれたのがわかった。 続けて魔法を唱えたよ。 「生活魔法! ポーション・クリエイト!」 湧き水を生み出して、アイテムボックスから薬草を出して、大きなポーションを作ったの。
「ほら、お薬だよ。これを飲むと、もっと元気になるよ!」 私が差し出したポーションを、竜は恐る恐る飲んでくれた。 すると、竜の体が温かい光に包まれて、傷がみるみるうちに塞がっていったの!
「グゥオオォ……」 すっかり元気になった竜が、私に感謝の咆哮を上げてくれた。
その時、竜の瞳の中に、昔の記憶が見えた気がしたの。かつてはこの森を守っていた、古の竜の姿。古竜は人間の魔力で深く傷つけられて、ずっと森の奥で苦しんでいたんだって。そして、仲間に連れられて、故郷の竜の里に戻ったんだって。
この、竜は、古竜から森を守るように言われたらしいんだ。
そしたら、なんだか金髪の人に不意を打たれて、怪我をしてしまったらしいんだ。
「もう、大丈夫だよ。私が、ずっと一緒にいるから」 私は、竜の大きな頭を、優しく撫でた。
竜は、私の優しい温かさに、深く頷いて、その大きな体を、私の足元に横たえてくれた。 そして、竜のおでこに、リルのおでこで光っているのと同じ、銀色の紋様が浮かび上がったんだ。
「すごい……! リリ、あの竜と、契約したんだ……!」って、ミーナちゃんが驚いて感動した声を出していた。 「ふぁ~……。これで、みんな安心できるね……。これで、この子も、私の家族だね!」 嬉しくなって、そう言うと、巨大な竜の頭にもたれかかって、安心して眠ってしまった。
ゴードンさんたちは、ただ突っ立っていたけど、私の「生活魔法」で、伝説の竜が私の「家族」になったんだもん! これで、この子はずっと一緒だよ。私の大切な、新しい家族だね!
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