第43話 大忙しのミケ
王都の仕立て屋兼、何でも屋を営むケットシーの商人、ミケは、ここ数ヶ月、猫の手も借りたいほどの大忙しでした。その原因は、他でもない、彼が「生涯の金脈」と目をつけた少女、リリからの「お届け物」です。
「ニャー! また来たにゃ! 今週は、『一瞬で汚れが落ちる洗濯液』だにゃと!?」
ミケは、リリの屋敷から届けられた大きな木箱を見て、耳をぴくぴくさせました。木箱の中には、透き通った青い液体が満たされた、大量のガラス瓶が入っています。
「リリ様は、ご自分がどれほど規格外な発明をしているのか、わかっていないにゃ……。このままじゃ、このミケ、寝る暇もなくなるにゃ!」
ミケはそう愚痴をこぼしますが、彼の目は金貨の輝きを放っています。
「この洗濯液の試作品、れ強いと一緒にすぐに工房に運ぶにゃ!すぐに量産化の研究に着手するにゃ!」
すると、どこからともなく現れた、モヒカン頭の店員がこれも音もなく、慣れた感じで試作品を運んでいきます。
「リリ様の開発された商品は、どれも驚くべき効果がありますからね。私も、リリ様のおかげで、毎日の仕事が楽になりました」
お店の店員が淡々と答えると、ミケは興奮気味に言いました。
「ニャハハ! そうだにゃ! 先週の『腐らない保存食』は、軍への納入が決まったにゃ! あれだけで、来年の春まで遊んで暮らせるほどの儲けだにゃ!」
リリは、毎週のように、様々な発明品をミケの元へ届けます。
ある週は、「フローラル石鹸」。これは、王宮の貴婦人たちの間で爆発的な人気を博しました。
またある週は、「一瞬で土を肥やす魔法の粉」。これは、王立農園のマルセルおじいちゃんを通じて、農家たちの間で「神の粉」と呼ばれました。
ミケは、それらの発明品を、リリの許可を得て、瞬く間に市場に流通させ、莫大な利益を上げていました。
「リリ様は、いつも『みんなが喜んでくれると、私も嬉しいから!』としか言わないにゃ。このミケが、どれだけ大変な思いで、流通ルートを確保し、特許申請をしているのか……!」
ミケは、そうぼやきながらも、リリ名義の通帳に新たな数字が増えていくのが楽しかったのです。
リリは、発明品の利益を受け取ろうとしません、なので、ミケが勝手に口座を作り基金として運営することにしたのです。
例の結社の活動資金となったり、スラム街の開発に基金を当てたりしています。
(しかし、リリ様と出会ってから、このミケの人生は、大きく変わったにゃ。もう、昔のようには戻れないにゃ)
ミケは、リリの純粋な心と、彼女が生み出す無限の富に、すっかり魅了されていました。
「よし! 『洗濯液』の次に、来週は、『飲むだけで魔力が回復する薬』の試作品が来るはずだにゃ! それまでには、この在庫を捌ききるにゃ!」
ミケは、そう気合を入れると、大量のガラス瓶と格闘し始めました。リリという名の規格外の発明家に振り回されながら、ケットシーの商人ミケの忙しい日々は、まだまだ続くのでした。
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